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俺がまだ陸上部だった時代から、彼女の走るフォームは美しかった。それは今でも変わることなく健在している。

俺がまだ陸上部だった時代から、彼女はいつも楽しそうにしていた。いつでも、どんな時も。でも今は違う。



「一、朗太」



「……どうしたんだ」


俺があげた映画のチケットを手に嬉しそうに帰っていった名前は今、顔を強張らせながら俺の家の玄関に立っている。初めて見る彼女のそんな表情に俺は少し動揺した。



「………」

「とりあえず、中入れよ」

「…うん」



玄関を過ぎ、自室に彼女を招き入れる。一体どうしたっていうんだ。名前をベッドに座らせ、暖かいミルクティーを用意した。


「……で、」


どうしたんだ、そんな顔して。
そう尋ねると、彼女は俯き、話始めた。


「ヒロトが、」

「基山が?」

「えっちしてた」

「……だれと」

「知らない」



あのバカ。何してんだ。名前の話をする時の表情から基山は絶対に名前の事が好きだ。これは鬼道や一ノ瀬、吹雪と同じ意見だからまず間違いないだろう。それなのに、何故。



「でね」

「ん?」

「その相手の人に、誰か来たよって言われたらさ、」

「………」

「妹だから問題ないって」



そこまで話すと堪えきれなかったのか、名前のキラキラした両眼から涙が溢れ出した。

なんだ、こいつら両想いなんじゃないか。それなのにここまですれ違うなんて。世話の焼ける。


ここは俺が、面倒を見てやるしかないかな。










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