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最近ヒロトが、冷たい。
それどころか、避けられているし、会うときには毎回違う女の子を引き連れている。前まではそんなことなかったのに。私がヒロトの一番だったはずなのに。私、何かしちゃったのかな。
「一朗太…」
「ごめん、俺にもわからない…」
こうして陸上部時代よきライバルだった一朗太に頼ってみてはいるものの、ヒロトの奇行の謎は解けない。
「私、嫌われちゃったのかも」
「そ、それはないと思う!」
優しいね、一朗太は。でも本当は自信がないって事、私知ってるよ。
チラッと教室の隅にあるヒロトの机を眺めてみる。ここ数日、ヒロトは学校へ来ていない。一体家で何をしているのかは知らないが、私がヒロトの家に帰っても自室からほとんど顔を出してくれない。
「んー、やっぱりさ、本人と直接話してみるべきだと思う」
「うーん…」
「これ、親戚から貰ったんだけど、あげるから。一緒に映画でも見てこいよ」
そういって、一朗太は私に映画のチケットを手渡した。そうだよね、私が行動を起こさなくちゃ始まらない。
「がんばれよ」
「ありがとう、一朗太!」
今日帰ったら、真っ先に渡そう。今まで重く、苦しかった心がスッと軽くなった。