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「告白、また断ったんだ」
先にお弁当を食べていた僕は、購買で買った季節限定もののアイスを食べる。ぺろぺろ、がりっ。
「うん、そりゃあね」
「…?」
「だって私、名前も覚えてないもん」
「…まったく」
そう言いながらも内心喜んでいる僕は性格が悪いのだろうか。
「お、卵焼き―」
無邪気に今朝の卵焼きを頬張る彼女を見ていると、僕は無意識の内に名前に問いかけていた。
「ねぇ名前、そろそろ好きな人いないの?」
"唖然" とは正にこの事だろう。ただし、この場合は僕が。
彼女はと言うと、飄々とプチトマトを口に運んでいる。僕が口走った事、運よく聞こえてなかったりは…
「いるよ?」
しなかった。というより、何か重要な事を聞いたような。
「え?」
「だから、好きな人。いるってば」
僕の中で何かが崩れ落ちた。