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ぴーんぽーん


間抜けな音が家に響き渡って私は目覚めた。今日は水曜日、朝の6時00分。学校があるにしても早い、早すぎる。これで「郵便局で〜す」とか「回覧板で〜す」とかだったら私キレるぞ。のそのそとパジャマのまま玄関に出て鍵を開けるや否や、いきなり扉が空いた。なんだ…!?私まだ鍵あけただけだし!?



「相変わらず酷い顔だな名前」


寝起きのぼんやりしたかんじが一瞬にして覚めた私の視界には、何故か制服の怜名。変質者ではなくてよかったが、何故、何故、


「あと登校まで1時間あるな。早く着替えろ。化粧品は捨ててないだろう?」


どうやら怜名は屍になった私を心配して来てくれたらしい。てきぱきと私をかつてのタイムスケジュールに乗せていく。髪の毛なんてパーマが落ちて根本がプリンだったし、酷い生活のせいで肌はボロボロでファンデーションどころでもなかったけど怜名は私を今までのように綺麗にしてくれた。私が食べてる間には髪の毛を巻き、私がネイルを塗り直している間にはつけまつげをつけてくれた。


こうして、家を出る10分前には私は1ヶ月ぶりにワタシを取り戻していた。つけまつげのせいでいつもよりも瞼が重いし、寝不足で頭があまり鮮明ではないけれど、それでも私には少なくともニートから脱却した解放感があった。

鞄を背負いながら、今まで殆ど言葉を発しなかった怜名が話し始める。

「まったく…」

鋭い視線が私へ注がれる。

「凉野に好きな奴がいると分かっただけでこのざまか。ふんっ、自称美女が聞いて呆れるな。お前は…、名前なら奪い取るぐらいの度胸があるのかと私は思っていたがどうやら買いかぶりすぎていたようだ」


そう言い残し、怜名は学校の方へと去っていった。足の長い怜名はどんどん遠ざかっていく。

…怜名の言う通りかもしれない。"私"なら他の女のコから風介くんを奪うなんて造作もないわけだし。めげるなんてらしくない、私は私のやり方で振り向かせるのみだ。そう考えたら今までのニートな私がすごく馬鹿馬鹿しく思えて、私は前方で既に小さくなりつつある怜名に向かって全力で走り出した。











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