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リュウジくんと基山くんの話をまとめれば、つまり。彼らは風介くんを待っていたのだ。私が来るのは想定外で、風介くんがくるのは想定内だった、と基山くんは弁解する。サッカー部のほとんどに女装の件がばれてしまったリュウジくんは、真っ赤な顔をして俯いたままだ。あらかた自分の失敗を悔やんでいるのだろう。
「でもなんで風介くんに会いたくて、しかも女装を…?」
「あー、それね…」
基山くんはその場に風介くんがいないことを確認してから苦笑いをした。
「風介が少しは意識してくれたら、と思ったんだけど」
「っていうのをヒロトが俺への罰ゲームにしたんだよ」
唇を尖らせながら言うリュウジくんは何かこうグッとくるものがある。
「何を意識させるの?」
「あぁ、風介の好きな子についてだよ」
私は雷が落ちたような衝撃をうけた。名付けてイナズマショック。はい、今なんて言いましたかワンモアプリーズ!
「風介って昔から恋愛とかしてるのみたことなくって」
「でも風介のあの顔はねぇ、本人気づいてないけどさ…」
「風介ぜったいに隣のクラスの」
何かを言いかけた基山くんの言葉は衝撃音に遮られた。正直、聞きたくないけども何故か耳に入ってきてしまうあの状態に入っていたのでホッとした。なんでこう人間の体っていうのは本人の意思よりも好奇心を優先させるように作られているのだろう。しかしつかの間。
「私は自覚しているよ」
衝撃音と共に現れたのは、噂の主、風介くんだった。おおおドアが半壊。……ていうか、風介くん、隣のクラスに好きな子いたんだなぁ。ってことはB組かD組ね。
…………いや、いかん。それがどうした。私は天下の名前様だぞ。一体風介くんをたぶらかした奴は誰だ、後世まで彼氏ができないように邪魔しまくってやる。ははは。
もはや強がりとなりつつある私の独り言は風に乗って消え、怜名は私の顔を心配そうに見ていた。