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「…っていう事があったんだよ!」
「………」
リュウジくんの女装事件から2日後の月曜日。私は朝学校へ着くや否や怜名に事件の詳細を説明した。私が全くのスッピンスウェットでいた事や、途中から風介くんまでもが現れた事まで細かく話したというのに何故か怜名は怪訝な表情を浮かべている。私にとっては大事件なんだぞ。
「本当に緑川が女装していたのか?」
「うん、そうだってば!」
「何のために?」
「知らないから驚いているんでしょ」
私が知ってたら空気読んで黙っとくって。…あれ、自分の中で済ませなくてはいけない部類の前提は酷いかな?
しばらくの沈黙が私たちの間に訪れたわけだが、ここで突然、怜名が突拍子もないことを閃いてしまった。この眩しい笑顔、悪い予感しかしない。
「………聞いてみるか」
「………ごめん何て言った?」
怜名、そこドヤ顔するとこじゃないよ。
「基山もいたのだろう?」
まぁいたけどさぁ、どうやって聞くというの。セリフとシチュエーションはセッティング済みなのか?てゆうか、この流れ、まさか。
「もちろん私は基山なんかと話したくもないからな。名前が聞け」
「鬼畜ですね怜名サン」
「だってお前が聞きたいのだろう?」
「……わかりました」
わかったけど……わかったんですけどね?私だって基山くんと仲良くないんですけど?私の目には怜名の方が断然仲いいように見えますが。で、こうして私は放課後にインタビューという名の地獄イベントに飛び込むことになった。
***
「ねぇ怜名、どうやって切り出すの?」
「知らん、単刀直入にいったらどうだ?」
「それって単刀直入っていうよりも歯に衣着せぬってかんじになるよ」
「基山の扱いなんてネズミ以下で十分だ」
「怜名がよくても私が嫌だなそれ」
「早くしないと基山帰るぞ」
「やっぱり鬼畜ですね怜名サン」
基山くんが帰ってしまったら元も子もない。ユニフォームから制服に着替えて支度を整え始めている彼に、慎重に近づいていく。
「ね、ねぇ基山くん」
「どうしたの?」
ビニール製のサブバッグにキチンと畳んだユニフォームを詰めながら基山くんは答えた。いいぞ、そのままこっちを見るな。
「あのさ、土曜日にさ、リュウジくんとさ、」
そこまで私が言うと基山くんは驚いた顔でこっちを見た。ああこっち見ないで気まずい。やっぱり好奇心半分で聞かなきゃよかった!
「もしかして名前ちゃん、」
「うわあああぁぁぁぁ!」
基山くんが口をひらいた瞬間、部室のドアが勢いよく開き、緑の物体が転がってきて基山くんに貼り付いた。あ、やべ、驚きすぎて口開いてた。
「あ、あのっ、名前先輩が見たのは、えっと、その、俺の……妹!妹ですから!ほんとに!」
緑の物体改めリュウジくんは転がり込んできたと思ったらめちゃくちゃ噛みながら弁解を始めた。右手は基山くんの口を押さえ、左手はジェスチャーのつもりなのかブンブンと振り回している。とりあえず、昨日のリュウジくんは私の見間違いじゃなかったらしい。
「………」
隣の怜名も飽きれ半分で全く仲裁しようとしないからこれは私がするしかないのかな。てゆうかリュウジくん、基山くんが死にそうだから手を話してあげようか。話はそこからだ。