夜の校舎を練り歩く
「あ、終わったんだね。黒羽丸に着付けてもらったみたいだけど…」
『…恥ずかしながら自分で着物着れないんです。浴衣なら大丈夫なんだけど…』
「そうなんだ…」
2人で話ながら玄関へ。
「家まで送るよ」
『そんな悪いよ…看病してくれたのに…』
「うーん…じゃあ大通りまで。それならいいだろ?」
『うん。ありがと』
そんな会話を繰り返し、私はリクオと共に奴良家を出た。
この時黒羽丸と首無が屋敷から私を見ていたことに私は気付かなかった。
―…
『そう言えばカナちゃんは無事だった?』
「うん。みのりちゃんのおかげだよって言ったらみのりちゃんにお礼言わなきゃって言ってた」
『そっかー』
「…もう無理しちゃダメだよ」
心配そうに私をみて言うリクオ。
私は胸が疼いた。
『そんな顔しないでよ。私は大丈夫なんだから!!…それに、人間無理しなきゃいけないことなんていっぱいあるんだから!!…まぁ私自分でもハチャメチャなことは自覚してる。でも…
守らなきゃいけないの…大事な人を…もう、失いたくないから…
嫌なの。守れない自分が…私のせいで誰かが傷付くのは…』
リクオの前で暴露してしまった本音。
醜いそれを、リクオは黙って聞いていてくれた。
「…でも、みのりちゃんが傷付くことで傷付く人もいるんだよ?みのりちゃんのことを大事に思ってる人が…自分が傷付くのが一番いいなんて思わないでよ…」
『…奴良くん?』
そっと、私の手を握ってきたリクオ。
俯いていて表情は見えなかったが、その手は微かに震えていた。
「…僕、不安だったんだ。みのりちゃんが倒れた時。もう目覚めないんじゃないかと思った…凄い怖かったんだ。カナちゃん達だってそう…だから、忘れないで。みのりちゃんが傷付くことで傷付く人がいるってこと」
『…うん。ありがとう…』
私は今日、人の温もりを知りました。
私の胸に暖かい何かが生まれた。
人の温もり
[ 17/40 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]