夜の校舎を練り歩く

「旧校舎?」


そんな中1人頭に?を浮かべる奴良くん。


「ハァ!?知らないのかよリクオ!!」


驚く島くん。


『ほら、最近噂になってるでしょ?旧校舎の話。道路を挟んで東にある旧校舎…そこに妖怪が出たらしいんだよね…雑誌にも載ってて』


私がそう言い終わるか終わらないかぐらいに私は奴良くんと共に屋上へと引っ張られた。



―…

そんなこんなで夜。
家を出て歩いていると奴良くんと会った。


「あ、江藤さん!!」


『?奴良くん?』


走って隣にやって来た奴良くん。


「江藤さん、も、家、此方だったんだね…」


息絶え絶えに話す奴良くん。


『ちょ、焦らなくて良いから!!』


私はリクオの息が整うまでしばらく待ち、また歩きはじめた。


「あはは…ゴメンね…」


『大丈夫だよ!!奴良くんこそ、気を付けて?呼吸整わないうちに無理に動いたりすると、心臓止まっちゃうことだってあるんだから』


「へぇ…詳しいんだね!!」


『…うん、親が医者だったし、そのせいでいろいろ手伝わされてたから』


「"だった"って?」


『いや、あの…死んじゃった、から…』


「…なんかごめん」


リクオは申し訳なさそうに眉を下げた。


『大丈夫。幼い頃に死んじゃったからろくに顔も覚えてないし…』


そんなリクオに、私は苦笑を返した。

…嘘はついてない。


「そっか…江藤さんは強いんだね」


奴良くんはそう言って微笑んだ。

その笑顔にきゅんときたなんて私だけの秘密だ。


『そんなことないよ!!今日だって怖いのダメなのに断れなかったし…』


「え!?ダメなの!?」


かなり驚く奴良くんに、私は苦笑する。


『うん…お化け屋敷で失神しかけた』


「失神……そっか…じゃあ僕が守ってあげるよ!」


『え?』


さも名案だと言いたげなリクオ。


「僕にくっついてればいいよ!2人の方がいいでしょ?怖かったら抱き付いてくれても構わないから」


『え!?そんな悪いよ!!』


「いいから。みのりちゃんだって清継くんに無理矢理来させられたんだもん。同じ同士として、ね?」


奴良くんはそっと微笑んだ。


『…うん』


うまく丸め込まれた気がしてならないが、まぁいいだろう。

…私自身、嬉しかったから強く断れなかったのもあるけど。

優しいリクオを利用するなんて、私、最低だ…。



自己嫌悪しながら進む。


ようやく旧校舎が見えてきた。


さぁ。物語の始まりだ。

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