ぐだぐだ | ナノ



「やっほー、ごーえんじー! 今日もたまねぎ頭してるかい?」

 となりのクラスなのに毎日のようにたずねてくるのは、円堂のおささなじみでもあるみょうじなまえだ。

「…またおまえか。宿題なら見せないぞ。それに、オレの頭はたまねぎじゃないと、なんど言ったらわかるんだ…」

 そして決まり文句のようにかえってくるであろう「宿題見せて」を、先に返事してやる。

「たまねぎのくせに薄情ものめ! 友だちがこんなにこまってるというのに! ふーんだ! 円堂はどうせやってないって言うだろうし、鬼道さんにたのむからいいもん」
「宿題は自分でやらなきゃ意味がないだろう」
「たまねぎはよけいだ! …っと、鬼道」

 コツンと、なにかのファイルを、やさしく頭にぶつけられた。

「私の人生に数学は必要ないから、自分でやらなくてもいいと思います!」
「そういう問題じゃない。高校に行ってから、もっとこまることになるぞ」
「鬼道さんの鬼ー、悪魔ー、中2病ー! 春奈ちゃんに『お兄ちゃんがいじめる!』って言いつけてやるー!」

 ふくれっつらで言ったところで、効果があるわけはないのだが。

「オレは中2病でもないが悪魔でもない。れっきとした人間だ」
「鬼道はむしろ被害者じゃないか、この場合」

 だだをこねていると、円堂がこちらへきた。

「みょうじ、豪炎寺たちも。ケンカはよくないぞ?」

 さわやかに言う円堂が、心なしまぶしいような。

「ちがうよ! 豪炎寺と鬼道さんが、私をいじめるの! 円堂キャプテンから、しかってやってよ!」
「誤解をまねく言いかたはやめないか。だいたい、宿題を見せないだけで、なぜいじめになるんだ…」
「みょうじ、また宿題やってないのか?」
「うん。そういう円堂は、昨日もおそくまでサッカーしてたけど、ちゃんと宿題やったの?」
「…オレもわすれた、けど…」

 だんだんと声がちいさくなる円堂に、豪炎寺と鬼道は、ほぼ同時にため息をつく。

「円堂…」
「…もういいから、とちゅうまではおしえてやる。それから、ここまでしかやってませんと、先生にきちんとあやまれ。とちゅうまででもやっておけば、多少の誠意はつたわるからな」
「おお! さすが鬼道! 頭いいな!」

 頭がいいとかいう問題ではなく、きちんとやってこなかったり、わすれたおまえらが悪いんだろう。と言いかけるが、やめておこうと自分に言い聞かせ。

「オレは円堂を見るから、おまえは鬼道に見てもらえよ?」
「どうあっても見せてくれない人たちだね、きみら」
「鬼道が言っただろう。宿題や勉強は、自分でやらなければ身につかない」
「ぶー…」

 不満そうに、だが2人の気持ちが変わらないうちにとでも思ったのか、いそいで教科書とノートをひっぱりだす。
 今日はこれだけで昼休みがつぶれそうだな、と思いつつ、それぞれおしえることとおしえられることに意識を集中したのであった。




067 宿題
-->石月さま




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