ぐだぐだ | ナノ



「はぁーい綱海先輩手が止まっていますよ!」
「あでっ!」

ぱーんっと小意気な音が、放課後の静かな教室に響く。

「んーいい音!」
「ってかなーんでお前が俺の勉強見てんだよ…。サッカー部の策略か?」
「あ、綱海先輩ここスペル間違ってます」
「マジか!」

私が綱海先輩の受験勉強のお手伝いをしている理由は単に彼のチームメイトが彼の学力を心配しているから。ここは大海原中学の才女の私が一肌脱ごうということである。

「スペルこうだよな?」
「そうですよ」

私は放課後、定期的に綱海先輩の勉強を見ている。

実際綱海先輩はやればできる人なので、一回コツを教えれば、平気なんだよね。ただエンジンかかるのが遅いだけで。

「さぁ、続き続き!」
「どうだ?調子は」
「うわー音村本当タイミング悪い。」
「音村、ナイス!」

清々しく、にかっと太陽みたいに笑う綱海先輩。
音村は持っていた袋から水筒を取り出した。

「なに持ってきたの?」
「これだ」

爽やかな匂いが、注がれたコップからした。これはまさしく、あれだ。

「シークワーサージュース…」
「もういくのか?音村!」

音村は部活途中で抜けてきたから、と、また部活へ戻っていった。
さあて、綱海先輩の集中力がゼロになる前にさっさとノルマを終わらせなきゃ。

「はい!やりますよ!」






ぐる、ぐる、ぴっ、ぴっ、ぐる…。
10問中7問正解か…。

「まぁまぁですね。綱海先輩、明後日までにこの間違いを修正してくださいね」
「いや!お前明後日はフリーだ。お前もほかの事をしたいだろ?」
「いやいや、私サッカー部マネージャーなんでマネージャー業務をするん「小さい事気にすんな!とにかく、明後日はいいから!」
「そう言って逃げるつもりじゃ…ってこら!先輩!逃げないでください!」

からっぽの教室にひとり、残された私は窓からグラウンドを見つめた。
元気なピンク色の髪がぴょこぴょこと跳ねている。綱海先輩は元気いっぱいだ。今日も。

「部活行っちゃったよ……ん?部活?」

いい事考えちゃった。






「なんだこりゃ!?」

次の日、サッカー部部室に綱海先輩用受験勉強机が出来ました。




069 受験勉強
-->こはるさま




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