ぐだぐだ | ナノ



ホーリーロードも無事に終った6月の事。今年初めての衣替えがやってきた。
男子は学ランを、女子はセーターやカーディガンを脱いで、来たるべき夏に備えて涼しい格好に移り変わる。

しかし此処数年の冷夏の煽りなのか何なのか、まだ肌寒さが残るこの時期に半ば無理矢理(とはいっても校則だから仕方がない)半袖のブラウスを着せられたなまえは露出している両腕をさすり続けていた。
登校中も、部活中も、授業中も、その後の休み時間もずっと。
なまえの幼馴染みである霧野蘭丸はずっとその様子を横目で見続けていた。
そして、三現目が終った直後のたった5分の休憩時間。蘭丸はなまえに声を掛けた。

「寒いのか?」
『うん。ちょっと肌寒い』
「寒いんなら上着着たらどうだ?まだ完全移行期間じゃないんだから」
『でも皆もう夏服だし…。私だけ冬服のままだったら暑苦しいって皆の気分害しちゃうでしょ。暑いから夏服着てる訳だし』
「それは気にし過ぎだとおもうぞ」

良く言えば考えすぎ、悪く言えば被害妄想とも言うけれど。
でも蘭丸はなまえのそんな優しさが好きだった。
人として他人に気を遣える事は良い事だ。
でも痩せ我慢をするかの様に腕をさすられていては逆に相手に気を遣わせてしまっているという事実に彼女は気付いていなかった。

もう一人の幼馴染みである神童拓人。
彼なんかさっきからこっちを見てはソワソワしている。
拓人は昔からなまえに対して何かと過保護に接している。
それはなまえが体が弱いから、なのだが蘭丸の目にも余る程の過保護っぷりだった。
その度に蘭丸がストッパーとして注意を入れているから、今はああしてソワソワして様子を見ているのだろう。
蘭丸はそんな手のかかる幼馴染み二人を交互にチラ見して、溜息を吐いた。

「取り敢えず、寒いなら保健室に行って上に羽織れるもの借りてきたらどうだ?」
『えー…別に平気だってば。それに、もう授業始まっちゃうし…』
「あのなぁ…」

変なところで真面目ななまえに蘭丸は呆れた。
まぁ、なまえがそう言うのなら別にそれでも良いのだけども。
大概なまえに対して甘いとは自分でも思ってはいるが、でも釘だけはうっておかねばならない。

「風邪だけはひいてくれるなよ?お前は体が弱いんだから」
『えへへ。肝に銘じておきまーす』

本当に解っているのかどうか分かりやしない態度だけど。
解っている、と言うことにしておいて蘭丸は自席に戻った。
が、いざ授業が始まるとなまえは背中を丸めて『ひっく』だの『くしゅ…』だのくしゃみをしていた。

(あいつ、やっぱり寒いんじゃないか…!)

だから言ったのに。と言わんばかりに蘭丸は控えめに溜息を吐いた。
しかし授業は始まったばかり。
授業が終わるまで蘭丸はくしゃみをするなまえをはらはらしながら見守っていた。
そして授業終了後、ダッシュで部室棟へ行き自分のロッカーからジャージをひっ掴んで教室へ戻る。

他でもない手のかかる幼馴染みの為に。


「肝に銘じておくって言ったのに何でいきなりくしゃみ連発してるんだ!」
『うん。それは…ごめん』
「ったく。今日一日は俺のジャージ貸してやるから風邪引くなよ?」




080 衣替え
-->鳴海さま




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