ぐだぐだ | ナノ



12月も半ばを過ぎ、私達学生の間にすっかり冬休みムードが漂い始めてきた今日この頃。

冬休みといえば、クリスマスにお正月ととにかく沢山の季節的行事で目白押しである。

因みに私の場合、クリスマスやお正月は毎年いつも連んでいる幼なじみ達と過ごしていた。

勿論今年もその幼なじみ達と一緒に過ごす、はずだったのだが…


『円堂、風丸!今年のクリスマスは家でやらない?このなまえ様がパーッと盛り上げてやるからさ!』

「あー…ごめん、なまえ。今年はクリスマスに予定が入っててさ…」

『はぁっ!?予定って何よ!あ、まさか彼女でもできたのか円堂っ』

「悪いけどオレもパスだ」

『え、風丸も?あんたも彼女できたの!?』

「いや、違うから」

『じゃあ、何?毎年3人一緒にやってきた神聖なるクリスマスよりも大事な予定って』


「「サッカー」」

『………』


どうやら今年はクリスマスやお正月、もしかしたら、“冬休み”といった学生ならではの冬期の長い休みさえも彼らには一切認識されていないようだ。

サッカーなんて単語、今年の春休みまでは出てくる回数こそ少なかったのに。


『サッカー…?ていうか、クリスマスなのに部活があるの?』

「ホントはクリスマスにやる予定はなかったんだけどな…冬休みも練習だ!ってこの熱血キャプテンと鬼道がうるさくてさ」

「ああ、だからごめんな!」

『うわ、あんた絶対に悪いと思ってないでしょ!なんか顔がキラキラしてるし!』


円堂と風丸。2人は私の小学校時代からの幼なじみであり、良き友人、いや親友とも呼べる存在だ。

円堂はいつも明るくて(時々、腹黒さが垣間見える気がするけれど)ノリがいいし、風丸は優しくてとても世話焼き(つまりはお母さん的ポジション)。

そして、私はどちらかというと円堂寄りの性格でいつも円堂共々、風丸にお世話を焼いてもらっている。


『もー、何だよ何だよ。2人ともノリ悪いぞ!めちゃくちゃ!』


ぷぅ、と頬を膨らませて言えば、円堂は困ったように眉を寄せて風丸を見た。

そんな円堂に対して知らないぞ。と苦笑いをする風丸。


「そんな事言っても仕方ないだろ?もうやるって決めちゃったしさー」

「…ほぼお前が勝手に決めたんだろ」

『じゃあさ、お正月は?お母さんが家に来るならおせち作ってあげるって言ってたよ』

「あー…正月も無理」

『なんでっ!まさかお正月もサッカーやるの!?』


自分の机に勢いよく両手をついて、その場で立ち上がる。

バンッ、と鈍い大きな音が辺りに響いた。

教室内でこの会話を繰り広げていたので、周りにいたクラスメイトの何人かが驚きの表情でこちらを凝視してきたりちらちらと様子を窺っているのに気づいたが、この際、そんな事は気にしない。


「大声出すなよ、恥ずかしい。ほら見ろ、周りのヤツらがみんなこっち見てるぞ」

「そ、そうだぞなまえ。いきり立つのはわからないでもないけど…少し落ち着け、な?」

『これが落ち着いてられるかーっ!』

「なまえ、うるさい」

「お、おい、円堂!」

『なっ…うるさいとは何だ!私は正論を言ってるだけだ!何も間違った事など言っていないっ!』

「お前誰だよ。てか、キャラ崩壊も甚だしいぞ」

『ちょ、風丸!円堂がだんだんブラックになってきたよ!スッゴい怖いんですけどっ!』

「頼むから2人とも本気で落ち着いてくれ」


がーがーと喚く私を円堂は面倒くさい、とそう言わんばかりに邪険に扱ってくる。

一応、今まで連んできた幼なじみ兼親友なのにこんな扱いってヒドくないか?


「ヒドくない」

『いやいや、十二分にヒドいだろ…って何故そこで円堂が普通に答えるっ!勝手に人の心の声を聞くんじゃない!』

「オレだって別に聞きたくて聞いた訳じゃねーもん」

「まぁ、聞くな。なんて言われてもなまえが自分から声に出してるしな」

『え、私今の声に出してた?』


私が聞くと、(真っ黒さ全開な)円堂と(相変わらず苦笑い気味の)風丸は首を縦に振った。

2人のあまりにもシンプルな反応にどことなく素っ気なさを感じた私はあっそ。と一言だけ返した後、再び、椅子に座って机の上に顔を突っ伏した。


…あー、何だか面白くない。


「ははっ、お前すっげー顔になってるぞ」

「こら、いい加減にしろ円堂。なまえ、お前は顔上げろ」

『円堂と風丸は、さ…そんなにサッカーが大事なワケ?』


「「は…?」」


唐突にぶつけられた言葉に2人は目を丸くし、口をぽかんと開ける。

何とも間抜けな表情だ。

内心可笑しくてたまらなかったが、決して笑ったりはせず、2人を交互に見やりながら私はさらに言葉を続けた。


『夏休みの時だってそんな事言って結局3人で遊べなかったじゃん。約束してたのにさ』

「それは…」

「ああ、その時はフットボールフロンティアの真っ最中だったから、」

『だから何?だから幼なじみとの約束よりもサッカーを取ったんだって?』

「へ…別にそういう、」

『いいんだよ。私、円堂が究極のサッカーバカだって事も風丸が円堂から頼まれてサッカーやり始めたんだって事もちゃんと知ってるから』

「……あのー…なまえ…?」

「…(とてつもなく嫌な予感しかしないな)」

『でも、約束くらいは守ってくれないと!…って事で、』


口の両端を僅かに吊り上げて、円堂と風丸の手にそれぞれ一枚の紙切れを押し付ける。

おそらく頭の中に大量のクエスチョンマークが浮かんでいるであろう2人に、ビシッ、という効果音がつきそうなくらい真っ直ぐに人差し指を立てて。


『そこに書かれてる内容はしっかりと守ってもらうからね』

「「……」」


2人はお互いにちらりと顔を見合わせてから、そのまま無言で私が押し付けた紙切れを恐る恐るといった感じで覗き込んだ。






罰として、冬休み中は私の言うことを何でも聞く事!


((はあぁっ!?))

(これくらいは当然!何せ、約束破りの代償だもん)

(だからってなんでオレ達が冬休み中丸々お前の言うこと聞かなくちゃならないんだよ!)

(へぇ〜…じゃあ、この間鬼道くんが探してた宿題ノート盗みの犯人、実は円堂なんだってみんなにバラしてもいいんだね?)

(あ、おま、ズルいぞ!絶対言わないって言ったから教えてやったのに!)

(なまえはオレ達の周りに知られたくない秘密をいくつも知ってるからな…円堂、ここは大人しく従っておいた方が身のためだと思うぞ)

(そ、そんなあぁぁ…)

(さすがはお母さん的ポジションの風丸一郎太くん。よくおわかりで!)

(お母さん的ポジション言うな)




043 冬休み
-->クロさま




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