Puzzled feelings 1

○社会人パロディ 恋人設定○




「あぁ。そうじゃな。では、また明日のこの時間に。
うむ、お休み。」

電話を耳から放し、通話終了ボタンを押そうとすると
携帯電話の向こう側から、プツリと相手が一足早くボタンを押した電子音と、それに続けてツーツーツーツーという無機質な音が響いて来た。

「ふぅ・・・」
思わずため息が出る。
電話を切ったのだから当たり前のことなのだが、少し物悲しい気持ちになった。



メール不精な恋人が『毎日寝る前に必ず電話をしようぜ。約束だかんな。』と言って遠くへ転勤して行ってから、かれこれ2年ほど経った。

それからというもの、流石に毎日という訳にはいかないが、ほぼ毎夜のように電話をしている。
よくもまあ続くものだ、と我ながら感心する。
日付が変わるくらいの時間にどちらともなく電話をかけるのが、既に日課になっている。
お互いダラダラと引き延ばしたりせず、時には愚痴を言ったり、嬉しかったことを報告したり、疲労困憊のときは5分もたたないうちに通話は終了する。

遠いので、年に会えるのは数回。
それ以外は電話と、たまにメールするくらい。

特に不満もない。
元々、自分はこと恋愛に関しては淡白なほうだ。
恋人と常々一緒にいたいと思うタイプでもなければ、無理難題をふっかけて相手を試すような事をするタイプでもない。
相手が元気にしていると分かればそれで、万事問題ない。

と思って来たのに、今この胸にわだかまっている感情はなんだろう。
何か物足りない、しっくり来ない。
パズルの最後のピースが上手くはまらないような、モヤモヤとしたモノが燻っている。

疲れているのだろうか、明日も仕事があるのだから早く寝てしまおう。

そう自分の中で折り合いをつけて、さほど強く感じられない睡魔の中に澱む意識を溶け込ませた。



→続く

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