数分後
銀時が着替えてから、手を洗ってリビングに戻ると、テーブルには食事の用意が整っていた。
「お、肉じゃが?うまそ〜」
「うむ。朝二日酔いのようだったから、胃に優しそうな煮物にしたんじゃ」
「ありがてぇな。いただきます」
「いただきます」
手を合わせたあと、銀時が先に、ぱくりとジャガイモを口に運んだ
運んだ・・・・
・・・・・・・
若干気まずい空気が流れる
「つ、月詠・・・・これ、味見した?」
「えっ!?
・・しておらぬが、何かおかしかったか?」
慌てて月詠も肉じゃがを一口食べてみる。
まず、癖のある甘さが口に広がり、後味まで果実のような甘ったるい香りが残った。
『げっ』という顔をしながら飲みこんだ
「すまぬ。銀時、残してくれなんし。」
「これ、酒か砂糖の代わりになんか入れただろ?」
もう一口もぐもぐと咀嚼しながら、分析する
「あぁ。日本酒の代わりに、昨日の残りの杏露酒をいれんした。」
すまなそうに、言った
「あ〜なるほどなぁ。それで甘ェんだな。
で、これは杏の香りか。」
さらに人参を口の中に放り込む
「砂糖を控えればよかったんじゃな・・・」
しゅんとして、下をむいている。
「まぁ、途中で味見はしたほうがいいかもな。
でも、銀さん甘党だから、これで全然OKよ。」
その言葉に頭をあげた困り顔の月詠に、銀時はニッと笑いかけた。
食事を始めてから、ペースを落とすことなく、肉じゃがを食べ続けている銀時の皿はそろそろ空になる。
「ぬし、無理して食べなくてよいと・・・」
「無理なんざしてねェよ。
俺ァ、食いてェから、食ってんだ。」
キョトンとした表情を浮かべた月詠は、次の瞬間、ぷっと吹き出した。
くっくっくと笑う月詠に
「何笑ってやがんだ。」
と問えば
「いや、ぬしも大概わっちに甘いなと思ってのう」
まだ、笑いが止まらない月詠の答えに、怪訝そうな顔をした銀時が続けた。
「あんだよ。疲れて帰って来たら、オメーが飯作って待っててくれたとか、それだけで嬉しいだろうが。」
「だから、そういうところじゃ。」
尚も笑い続ける月詠を横目に、銀時は肉じゃがをたいらげた。
「まぁ、あれだ。でも、次回からは杏露酒の量は考えろよ」
「うむ。気をつける」
やっと笑いのおさまった、月詠は神妙に頷いた。
***
料理する時は、調味料をしっかり計りましょう。
そして、味見をしましょう。
でも、どんな甘みも苦みも、隠し味になったり決め味になるのは
そこに、特別な気持ちが一緒に煮込まれているから
だから、多少の失敗には目をつぶって一緒に美味しく食べましょう。
それが、2人で楽しく食事をする秘訣
【終わり】
→あとがき
社会人パロディ
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