服の選び方2




15分後

あとは家を出るだけの状態の月詠がリビングでカバンの中身をチェックしていると、歯を磨き終わった銀時が荷物と背広を持って入ってきた。
どうやら準備完了のようだ。


入って来た方に顔を向けると、昨日より一枚多く衣服を身に付けた男が目に入った。

「ぬし、今日からカーディガンを着ていくのか?」

「おー会社の連中も半分くらい着だしたから、そろそろかと思ってな〜
折角オメーが選んでくれたのだから、着ないと勿体ねぇし」

銀時が去年まで着ていたセーターは、先シーズンの終わりに穴が開いてしまった。
そのため、数週間前に月詠がグレー地にボルドーの縁取りの物をプレゼントしたのだった。

「そうか。ありがとう。」
そう言ってから、月詠はそのカーディガンを着た胸に抱きついた

「ぬおぉぉ!?」
突然のタックルに驚いて変なところから声が出た銀時だったが
すぐにその自分より一回り細い背に腕を回して抱きしめた。


パッと見、とてもラブラブなカップルの朝の光景

しかし女の言葉で甘い空気は崩れる。

「うむ。やっぱり肌触りが良いのう
これにして正解じゃった」

『??』という一瞬の間の後
男の叫びが響いた。
「はぁぁ!?何言ってんだオマエェェェェェ」

「ん?だから、この生地は気持ちいいと言っておるんじゃ」
カーディガンに顔を埋めたまま、女は言った

「何、お前、純粋に俺に似合いそうとか、好きそうとかじゃなくて、触り心地で選んだの?」
必死に言う男とは対照的に

「ん?そうだが?
ちょうど似合いそうな色があって良かったわ」
女は相変らずのんびりとした声で返した。

「あのなぁ‥」

「どうせなら抱きしめられた時に、気持ちがいい方が良いじゃろう」

「さいで・・・」

あ〜チクショー珍しく朝から積極的で嬉しかった俺がバカみてぇじゃねぇか

という呟きを、月詠は聞こえない振りをした。


家を出る3分前の出来事


【終わり】
→同設定でもう1つ
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