![]() ‖ 後ろ髪A そろそろ日輪の年期が明けるという時に、事件が起きた。 日輪の上客であり、何度か身請け話を持ってきては断られていた人物が座敷で暴れた。 幸いそこまで大きな被害は出なかったが、日輪が足を痛めてしまい、もう自力では立てなくなってしまった。 もう遊女として客を取れなくなった日輪は、太夫の位を降ろされた。 そうして起こった突然の見世のトップ引退で、内部は大わらわとなった。 『歩けないのでは、他に使い道がない。』『どうしたものか・・・』 見世の者が話していると、そこに月詠が割って入った。 「わっちが、預かりんす。 日輪ならゆくゆくは遣り手として、遊女を束ねることも可能なはずじゃ。 今は、わっち付きの番頭新造についてもらいんす。 それで異存はないじゃろう。」 「しかし・・・・」 「この見世で、次にお職を張るのはわっちじゃろう? いずれにせよ、番頭新造は必要にありんす。ならばその役目、わっちは日輪にやってほしい。 どうか、わっちの我儘をのんでくれなんし」 その願い出を初めは反対した楼主も、最後には折れて受け入れた。 その事件を以って、月詠は大見世「百華」のトップ花魁となった。 日輪は番頭新造として、彼女を支えた。 そして、銀時との関係もこっそりと応援してくれた。 せめてもの妹分の幸せを願って →続く [*前] |[次*] [戻る] [TOP] |