銀月長編 | ナノ





‖後ろ髪@



男が目を覚ますと、夕暮れにさしかかった日が部屋をほんのりと赤く染め始めていた。
先ほどまで体を重ねていた女は、横に居なかった。

窓の方を見やれば、月詠が男物の着物を軽くはおり、障子を細く開けて外を見ながら煙管をふかして座っていた。

銀時は自分の襦袢を軽くはおり、そちらに向かった

「そんなとこ居たら、外から見えんぞ」
「座っていれば、首から上しか見えないから問題ありんせん」

「そういうもんなのか」
そう言いながら、月詠を後ろから抱き込む形で座った。

「そこにいたら、ぬしも見えてしまうじゃろう」
「誰も見てねぇから大丈夫だろ」
そして月詠が吸っていた煙管をひょいっと取り、自分の口に運んだ。
月詠は空いた手で、障子を閉めた。

「やっぱ、上等の葉は違うねぇ」
「ぬしは元々吸わぬじゃろう。」
「ま、俺は煙より糖分だからな。」


「そういえば・・・・
誰かに、自分の煙管を貸すなんて初めてじゃな」

「あぁ、オマエ、そういう手練手管は使わなそうだもんな」
「必要のないことはしないだけじゃ」

銀時が月詠の肩に顔をのせて心の内を呟く
「これからもすんなよ」
「独占欲強いんじゃな、意外じゃのう」
くすくすと鈴が転がるような笑いの混じった言葉が返った。

「さぁ、そろそろ戻りなんし。ぬしの仕事が始まってしまう。
わっちも身支度をせねば。」

「そうだな。
あー行きたくねぇ・・・」

「何を童のようなことを言っておるんじゃ」

銀時は散らばっていた自身の襦袢と袷を手早く着ながら話を続ける。
「あんだよ、可愛く言ったんだろうが」
「可愛げが全くないから、やめなんし」
「けっ!!分かりましたよ〜」

身支度の終わった銀時の横で、月詠は襦袢だけを緩く着た。
そして、どちらともなくもう一度抱きしめ合った。

「また来る」
「あぁ、待っておる」
そうして男は部屋を出ていった。


こうして2人は内密に逢うようになった。
遊女と店の番頭
うまく行くはずのない関係と分かりながら、何年もその関係は続いた。

その間、月詠は何度か来た身請け話を断った。
「日輪がいる間は、自分も見世に残る」
と、2つある理由のうち1つだけを言って全て蹴った。


→続く

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