銀月長編 | ナノ





‖望月の通い路A


それから数日の間は、安静に過ごして月詠の体力が回復するのを待った。


「本当に行けるか?」
「あぁ、問題ありんせん。」
「ま、途中で歩けなくなったら俺がおぶってってやるよ。」
「馬鹿な事を言うでない。自分の足で歩けるわ。」

最終確認のように軽口を叩きあって、簡単に身支度をした2人は挨拶をしに母屋に向かった。


『本当に大丈夫かい?』
『もっと居てくれていいんだよ?』
と心配する老夫婦に丁寧に感謝の気持ちと礼を述べてから、いとまを告げた。

そして
真っ直ぐに頭をあげ、迷いなく前だけを見る月詠に、銀時は歩調を合わせながら
共に、一路吉原への途についた。





色里、色街、吉原の街
朱い大門をくぐった先は、まやかしが見せる常春の夢
定めを背負う女たちの錠付きの籠

救われるは出会えた喜び
糧となるは交わす契り
いずこも十人十色の幸せの形



【終わり】
最後までお付き合いありがとうございました

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