銀月長編 | ナノ





‖ 雲隠れA


15分程して到着した家の戸をドンドンと叩いた。

「夜分遅くにすまねェ。助けちゃもらえねェか。」

すると中から
「はいよ、今開けるからね」
と言って、人の良さそうなお婆さんが出てきた。

「すいません。川の辺りでゴロツキに襲われて、連れが怪我しちまって・・・
ちょいと場所と手当て道具貸しちゃもらえねェかい?」

「おやおや、すごい傷じゃないか。
若い娘さんなのに、むごい事だよ・・・・
隣の離れ、今は誰もいないから、遠慮なく使って構わないよ。」
そう言ったところで奥に声をかけた。
「ねぇ、いいだろう、辰五郎。
アンタ案内してあげておくれよ。

先に行って待っておいで、今道具を探して持って行くから」


お爺さんに案内されて隣の離れまで月詠を運んだ。
中は最近まで使用していたようで、綺麗に掃除してあった。


まず、月詠を降ろして巻かれている着物をはずし、顔周りの傷を確認する。
火をおこし、水を汲んで来た所で
お婆さんが布巾と薬、お湯を持って来てくれた。

お婆さんにも手伝ってもらって、傷の手当てをした。


「これは・・・可哀想だけど痕が残ってしまうかもしれないね・・・
嫁入り前の娘さんなのに」

「そうだな・・・
この辺、医者はいるか?」

「ここから半日は歩かないといけないねぇ
それに、残念だけど、こういう傷の専門家ではないから、見せても何にもしてもらえないかもしれないよ」

「そうか・・・
ありがとうな、婆さん。
コイツは暫く目を覚まさないと思うから、このままここ借りるな
あ、あと、川の辺りにゴロツキが転がってるから、明日になったら、警察に通報してもらえるか?」

「分かったよ。気にせず使っとくれ。
お嬢さん、早く気が付くといいけどねぇ・・・」
そう言って、母屋の方に戻って行った。


囲炉裏の火が大きくなったり小さくなったりしながらチロチロと部屋を照らす。
苦しむような表情を浮かべる月詠の顔を見つめ続ける銀時の表情は、影になって見えなかった。


→続く

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