銀月長編 | ナノ





‖七の火A



表通りへ出るため角を曲がろうとしたところで、数人の男たちと出くわした。
いかにもゴロツキという風貌の男たちだった。


関わらない方が賢明だと判断し、月詠は目を合わせず横を通り過ぎようとした。
入口付近に店の者たちがいるはずだ。


「あれー?
そこのお嬢ちゃん、死神太夫の月詠さんじゃない?」
リーダ格の男が声をかけてきた。
無視して小走りすると

「え、無視?酷いな。オジサン傷つくなぁ〜」
と言って近づき、手を掴んできた

「離しなんし」
振り払おうとしたが、予想以上に力が強く、叶わなかった。

男は仲間たちに声をかけた
「おい、お前等、大見世の上玉花魁が手に入るぞ」
それを聞いた子分風の男たちは口々に
「おぉ、やりましたね、兄貴」
と言い、ワラワラと周りに集まってきた。

兄貴と呼ばれた男は、月詠にナイフを突きつけてきた
「太夫さん、動かないでくれよ
そのキレーな顔に傷が付くぜ」

「顔に傷くらい何でもありんせんなぁ」
そう言って、月詠はナイフを持った男の手を払いのけた

「この、アマ、良い気になってんじゃねー」
動じない女の行動に激昂した兄貴分は、ナイフを持ったまま腕を振り回し始めた。

そして、その切っ先が月詠の額を横一文字に切った。
深くはないが、決して浅くない切り口から、つーっと血が伝い左目の辺りを流れた。
月詠は反射的に片目を瞑り、袖口で血を拭こうと腕をあげた。
しかし、男はその動作をまた抵抗してくるものと勘違いし、再度ナイフを振り回してきた。

「やめなんし」
落ち着いた声で諌めるも、届かなかった。
片目を閉じているため、バランス感覚を崩している月詠は、着物の裾を踏んでよろけた。
運悪くよろけた先にナイフが縦に入り、月詠の左目の下に大きく切りこまれた。

「あ」

痛みを感じて蹲ろうと屈みかけた所へ、子分の1人がその鳩尾に拳を入れてきた。
月詠は意識を失い、そのまま倒れた。

それからゴロツキ達は月詠に男物の着物を被せ、敷物の様な物でくるんでから、数人で担ぎあげ、出入り口である大門まで走って行った。


→続く

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