銀月長編 | ナノ





‖七の火@



戌の刻まで少しという頃

月詠が部屋で支度をしていたところ
外がざわざわと騒がしくなった

そして
「火事だ」という声がした

それを聞くや否や、立ち上がり、窓を開けて火の方向を確認した。
数軒先に火の手が見えた。

月詠はすぐに、禿に指示を出した
「廊下を『火事だ』と叫びながら走って、一階まで行きなんし。
そして楼主と番頭に、上は順次避難させると伝えてくれなんし。」

振袖新造には
「日輪に肩を貸しながら、下まで降りなんし。
わっちは、他の部屋を見回ってから行くゆえ」
そう言って、日輪を2人で立たせて廊下まで行き、壁伝いで送りだしたところに
銀時が全速力で走りながらやってきた

「月詠!!大丈夫か?」

「銀時。日輪を頼む。
ぬしなら背負って下まで行けるじゃろう」

「オマエは・・・」

「わっちは、他の部屋を見回ってから行く。大丈夫じゃ、すぐに下に行く。
ぬしは、みんなを非難させてくれなんし。」

「あぁ、分かった。
火の手が回り出したら、オマエも諦めて、避難しろよ。」

「うむ。では日輪を頼んだぞ。」

半鐘が鳴らされているのが聞こえた。



部屋を回って行く。
隅で小さくなっているものもいれば、念仏を唱えているものもいた。1人1人に声をかけ、下に避難させた。
ほぼ全ての部屋を見終わったところで、火がだいぶ回っていることに気が付き、慌てて入口に向かった。
ちょうど一階まで降りた時に、表玄関へ向かう廊下が目の前で崩れた。
風向きの関係で、表通りの方に火が回っているようだった。

行く手が塞がれてしまったので、反対側の裏口から出ようと奥へ回った。
幸いそちらにはまだ火の手はあがっておらず、無事に外へ出られた。


出たのは、お歯黒溝のすぐ前。
普段あまり近づく事のない場所だ。

今日は、火事のせいもあり、ほとんど人がいない


→続く

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