ハタチに乾杯


○現代パロディ 恋人設定○





明日、ワタクシ神楽はお酒が飲める年になる。


「1日早ェけど、記念に飲んでみるかィ?夜なら、四捨五入すりゃもう二十歳だろ?」
と恋人の総悟に言われ

(どう四捨五入するんだヨ)とツッコミかけたが
(まぁ、それも社会勉強か・・大人の階段のぼっとくカ)と思い
「そうアルナ」
提案に乗った。





スーパーで総悟に飲みやすそうなお酒をいくつか見繕ってもらい、いつも彼が飲むお酒と一緒にカゴに入れた。
何故かお茶とジュースも入っていた。

つまみとお菓子も多めに買った。
彼が飲む時は、ほとんどつまみなしに酒だけ煽るから、これは私のためだろう。

じーっとカゴの中を見る私に気が付いた総悟は
「飲めなかったら俺が飲むから心配すんな」
と言って柔らかく笑った。
珍しいこともあるもんだ。

『酒始め』という言葉があるかどうかは知らないが
飲める人にとったら、一緒に飲んでくれる人がいるってのは嬉しいんだろうナ。
だって、彼はとても楽しそうだ。



「「カンパーイ」」
私はアルコール低めの甘そうなカクテルの缶を
彼はビールの缶を持ってカチンと合わせた。

総悟が勢いよく喉を鳴らす横で、私は恐る恐る液体を口に含む。

(始めは甘くてしゅわしゅわするジュースみたいカナ・・・?)
と思ってたら、後味が苦く
飲み込むと、口と喉に少しヒリヒリとする感覚が残った。

「どうでィ?」
「なんか・・・変な感じネ」
「変?」

「始めはジュースと変わんないと思ったけど、飲み込むと苦くてヒリヒリするアル」

「まぁ、始めはそんなもんかねィ。
そのうち旨さが分かるようになるか。」

「最初は甘くて美味しいアルヨ」

「まぁ、無理して全部飲むなよ」
皿に開けた乾き物に手を伸ばしながら言ってきた。


つまみとお菓子を食べ、お茶とジュースを挟みつつも、結局缶の半分飲んだところでギブアップした。

「う〜ん、この程度のお酒を美味しく飲めないなんて、まだまだ大人の女への道は険しいネ」

「おーう、まだまだ、だねィ。」

「なんだとォォ?」
カチンときて言い返すと

「でも、焦んなくていいんじゃねェか?」
少し酔っているのか優しい言葉が返ってきた。

いきなりのフォローに戸惑って目を泳がせた。
その先に、彼がつまんでいるミックスナッツが開けてある皿が目に止まった。
そして、その中に見慣れない種のようなものが入っているのに気が付いた。

「コレ、何アルカ?」
指さして訊いた。

「ん?
あー知らなかったのか。そりゃ、南瓜の種でィ。」

「かぼちゃの種・・・美味しいアルカ?」

「カリカリしててうめェよ。ビールによく合うぜィ。
食ってみるか?」

「う、うん」

ほいっと渡してくれた皿から、小さな緑色の種を一粒取り、しげしげと見つめてから
恐々と小さくかじってみたら

横で、クックックと笑われた。
「なんか、リスみてェだな。
で、お味は如何でしたか、お嬢さん?」
頭を撫でられながら訊かれた。

「美味しかったアル。予想外アル。」

「そりゃ、良かったな。」
総悟はまだ私の頭を撫でている。

酔っているのか?
いつもはこんな量じゃ全然酔わないのに・・・

そんな風に思っていたら
総悟が声をあげた

「おっ!」

「なにアルカ?」

「神楽

誕生日おめでとう」

とてつもなく優しい顔で言われた。
時計を見ると、丁度12時になったところだった。

「あ、ありがと・・アル」
なんだか照れる。



総悟はサプライズとか出来る人じゃないから、プレゼントくらいはくれるだろうけど
今も、明日の友達主催のバースデーパーティでも、特別な事は何もしないだろう。
でも、一番に祝ってくれた事、20歳の瞬間に一緒に居てくれた事が、最高に嬉しかった。




まぁ、こんな風に楽しくなら、また家で飲んでもいい・・・かな。
ちょっとずつ、お酒を一緒においしく飲めるようになったらいいな


少しだけ大人になった20歳の夜





HAPPY BIRTHDAY 神楽





[終わり]


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