一子相伝〜沖田家の場合〜


○沖神夫婦設定 子あり設定 姉10歳・弟8歳○


お布団をパタパタはたく音が響く昼下がり。
平和な空気が流れる時間。

しかし沖田家では少し事情が違うようで・・・

「もう我慢できないアル。表出やがれ、サドヤロー」
「受けて立ってやらァ、チャイナ娘ェェェ」
喧嘩する気満々で庭に出て行く両親を

(またか)
という目で縁側から見つめる長女。

ガキィィィンという金属音、ズザァァと地面を滑る音と共にものすごい速さの攻防が繰り広げられいるのを、冷めた目で見ながら
「庭のお花と木、手入れしたばっかだから、めちゃめちゃにしないでよね・・・」
と少女が冷静に呟いたところで、ぱたたたたと玄関の方から走ってくる軽い足音がした。

「姉上、ただいま帰りました。」
「あーおかえりー」
「父上と母上は、また手合わせですか。」
「いや、手合わせって言うか、喧嘩って言うかストレス発散っていうのが近いと思うけどね。
毎回毎回よくやるわよね。後で庭片付けるの私なんだけどなぁ〜」

愚痴ったところで、隣を見ると
少年はキラキラした目で、両親の打ち合いを見ていた。

弟は、この前寺子屋に行き出すと同時に剣道を習い始めた。
小さいころから父の剣を見て育ったとはいえ、いざ自分で竹刀を振ると父のすごさを改めて感じたらしく、最近は父の太刀筋を食い入るように観ることが多くなった。


(まぁ、どうでもいいけど。)
なんて、思ったら、弟は横でスクっと立ち上がり、下駄を引っかけて庭に出て行こうとした。

「あ、危ない!!」
と長女が声を出したのと、両親が動きをやめてこちらを見たのは同時だった。

(なんだ、2人ともちゃんとこっち見てたんだ。
なら、おかえりくらい言ってあげればいいのに。)

「どうしたィ?突然入ってきたら危ねーだろ」
父がそう声をかけた。

それに対して、弟は意気込むように言った
「父上、僕に剣を教えて下さい。」
「ん?オメー道場行ってんだろ?」
「はい、でも、僕、父上みたいに強くて剣に秀でた侍になりたいんです。」

父は一瞬面食らったような顔をしたあと、とっても優しい顔で笑った。

(あ、ズルイな。父上のあんな笑顔あんまり向けてもらえないのに。)

「そうかい。俺は厳しいぜィ
大丈夫か?」

「はい、覚悟してます
よろしくお願いします」


こうして、その剣技は父から息子へと受け継がれていく。



一子相伝



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