ドドドドドっと物騒な音をたてていた傘の銃口が
パスンパスンと音を変えて、空気のみを繰り出した。
「あ・・・」
チャイナの『しまった』という響きを持った間投詞が聞こえた。
「弾切れか」
分かっちゃいるが、一応問うてみる。
「そうみたいアル」
だから言わんこっちゃない。
こーいう、大人数相手にする時は、如何に最小限の動きで相手を動けなくさせるかが大事なんだよ。
まぁ、コイツには無理な話か。
しかし、そんじゃあ、この雑魚ども片すのァ、ちょいと骨だな。
「・・・チャイナ」
小声で話しかける
「何アルカ」
「あそこの角まで移動すんぞ
そしたら、その上の窓から外に出ろィ
連絡して増援を呼んで来てくんなァ」
「な、何言ってるアルカ?
お前1人、こんな敵のド真ん中に残して行けるわけないネ」
驚いた声で反論してきた。
まぁ、そいつァ予想の範囲内だ。
「弾が切れて、遠方攻撃の出来ねェオメーと刀の俺じゃあ、この人数この体勢で相手にすんのは、ちょいと部が悪ィ。
だったら、増援頼んだ方が、合理的だと思うぜィ?」
「そ、それもそうだケド・・・」
踏ん切りのつかないチャイナに言葉を畳み掛ける。
「俺ァ、このくらいの人数くれェ1人で相手できらァ
テメェが背を預けてる男の実力信じなァ」
論理的な説明と念押しの言葉が効いたのか
暫し迷ったような間の後
「分かったアル」
チャイナはキッパリと言い切った。
「んじゃあ、行くぜェ」
2人で敵を薙ぎ倒しながら、壁の方へ移動して行く。
そして、角まで行ったところで、後ろの女から声がかかる。
「じゃあ、ここは任せるアル
お前、やられんなヨ。」
「オメーは誰にもの言ってやがんでィ
俺ァ、泣く子も黙る一番隊隊長様だぜィ
さっさと行きなァ。」
「すぐに戻ってくるからナ。」
その言葉が聞こえてからすぐに、後ろからトンと音がした。
どうやら外に出たようだな。
軽い安堵にも似た感情を覚えて、ふっと息を吐き出す。
そして、今度は短く吸ってから呼吸を止める。
それによって気持ちが切り替わる。
きっと今は触れたら切れそうな雰囲気と鋭い目をしていることだろう。
さぁて、久しぶりに暴れてやろうじゃねぇか。
この人数だ。
加減してる余裕はねェ
さァ、死にたいヤツからかかってきなァ