寝る子が育っても




『眠れないアル。』

冴えわたっている目をパチリと開く。

『あー失敗したナ。』

盛大に溜息をつく



定期的に
―といっても、周期が安定している訳ではないけれど―
感覚が鋭くなる期間がくる。
その間は、目は色々と端々の物を拾い、耳は音の細々した所までよく聞き分け、鼻はふとした匂いにも敏感になる。

そんな時にシャンプーを変えたりすると
就寝時に馴染みのない香りが、すぐ横に散らばる髪からしてきて落ち着かない。
だから眠れなくなってしまう。



シャンプーが切れてしまって、お風呂に入る時にストックしてあるものを出したら、今まで使っているのと違うメーカーのものだった。

その時は何も考えずに髪を洗った。
上がってからずっと違う匂いがすると感じていたが、特に留意すべきことではないと思っていた。

しかし、蒲団に横になってから、人口的な花のような香りが気になって仕方がなくなってしまった。
自分の周りにその匂いがまとわりついて漂って、うまく眠れない。

『あ〜困ったアル』

隣ではムニャムニャと総悟が眠っている。
いつも通りだったら自分も一緒にスヤスヤと夢の中だったろうに。
ちょっと恨めしい気持ちになる。

こちらを向いて眠っている男の方に、自分も体ごと向かい合う。
そして、無造作に散らばっているサラサラした前髪を軽く引っ張ってみる。

全く動かない。

暫くツンツンと髪をいじっていたが、反応がないので、ちょっかいを出すのにも飽きてしまう。



眠ろうと思いながらも意識がある状態だと、体の冷えを、特に手足の先にある冷たさを自覚する。

「寒いナ〜」と思って
総悟の腕の中に体をグイグイと入れて、もぞもぞとその胸のあたりに頭をセットする。
眠っていることで、体温のあがっている人間という熱源が自分に伝わり、少し体が暖かくなる。

ふーっと、その人肌の心地よさに息を吐く。
そして大きく吸うと、嗅ぎ慣れた彼の匂いが一緒に入ってきた。

『あぁ、いつもの匂いアル。落ち着く。』
と思うと安堵感に満たされて、急に瞼が重たくなって来る。

そうして、直ぐに意識はすっと睡眠へと移行していった。




程なくして神楽の寝息が安定した所で
沖田の目がパチリと開いた。

「やぁっと寝られたみてェだねィ」

そう呟くと、ふっと軽く笑みをもらして、神楽の顔にかかっている前髪を払ってやる。
その後、自分に擦り寄るような体勢ですやすやと眠る女の背に手を回して、軽く抱きしめた。

「おやすみ。ゆっくり眠んな。」

そのまま体を寄せて合って、2人で蒲団を共有する。
まだもう少し寒い夜は続く。



【終わり】


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