沖田の左手は腰に回され、右手は私の左耳から顎にかけて置かれている。
つまりは、体も顔も固定されてしまっている。
緩い、腕による束縛。無理に振りほどこうと思えば抜けられる。
けれどもそれをしないのは、私も期待しているから。
少し・・いや、だいぶ。
やや斜め上の彼の顔が少しずつこちらまで降りてきた、と思ったところで目を閉じた。
もうそれは、慣れて自然となったこと。
「目ぐらい閉じろやァ」なんて言われたのは、だいぶ前のこと。
唇が触れたと思ったら下唇を舌でなぞられた。
それによって、私は僅かに口を綻ばせる。するとその舌が中に入ってきた。
それもいつものこと。
そして徐々に激しくなっていく動きが思考が鈍らせていく。
私の顎を固定していたアイツの右手が下に動く。
つーっと指の腹で首筋をなぞって、下に降りて行く。
さわるとふれるの間の絶妙な力の入れ方で、私の肌の上を滑る彼の手。
口付けで敏感になっている私の体は、その手の動きにゾクリと反応してしまう。
「んん・・・ん・・」
思わず、くすぐったさに身を捩るような仕草をしたことで
繋がっていた唇が離れ、それが合図のようにお互いの開かれた目が合う。
「息が上がるの早くなったよなァ」
「う、うるさいアル」
「初めは、ガッチガチで楽しむ余裕なんてなさそうだったのにねィ
エロくなったもんだなァ」
「誰のせいだと思ってるアルカ!?」
売り言葉に買い言葉の要領で、深く考えずに返した
沖田はそれを聞いて、少し驚いた顔をしたあとに問うてきた。
嬉しそうな、それでいて意地悪そうな、そんな何とも形容しがたい表情をした
私にしか見せない顔で
「俺のせい?」
「他にいないアル!!」
「他にいたら許さねェよ」
私が言い返す前に、また唇を奪われた。
さっきとは比べものにならないくらい、貪るように激しく
力が上手くはいらなくて、彼によりかかりながら思う。
別に、他に男が欲しいなんて思わない。
コイツで十分・・沖田がいい。
というか、こんなの・・・1人だけで充分だ。身がもたない。
[終わり]