雨のち晴れ2




時間にしたら、1時間くらいだっただろうか。
それはそれは本気で遊んだ。

他の客が見に来るくらいのエアホッケーのラリーの応酬をしたり、
シューティングで、店の最高点超えても二人の勝負がつかなかったから、何度もやり直して、店長に「そろそろやめて」と言われたりした。


なんだか、やたらとスッキリした。
いつものことだが、コイツといるとちょっと気分が明るくなる。
無心にゲームに没頭できたことで、モヤモヤもだいぶ減った。
チャイナには少しだけ感謝した。
言わねェけどな。


ゲーム対決は楽しいのだが、いつの間にかギャラリーができて、やりづらくなってしまっていた。


「チャイナ、そろそろ出るかィ?」
と声をかけた
「そうアルナ。いい時間ネ。」
珍しく意見が一致したので、外に出た。





「あ、雨やんだアル」
「そうだな。濡れずにすみそうだな。」
「おうヨ」

チャイナは、たったったったと走りながらゲームセンターの軒下から駆け出す。
そしてこちらを振り返ったと思ったら

「あ!」
という声と共に自分のはるか後ろをに目の焦点を合わせた。

「虹が出てるアル」

その声につられて後ろの空を見てみると
まだ色は淡いが、三種ほど色が見てとれる虹が薄く架かっていた。

「へー、この時期に虹たァ珍しいな」

「綺麗アル」
神楽は満面の笑みで飛び跳ねている。


その笑顔を見ていたら、自分の心にまだ少しわだかまっていたモノや、やさぐれた感情が嘘みたいになくなっていて、とても穏やかな気持ちになっていることに気付いた。

チャイナのおかげ・・・か。
我知らず、軽く笑みが浮かぶ。

なァ、知らねェだろ?
俺がその笑顔にどれほど癒されているか。
その、底抜けにまっさらな純粋さにどれほど救われているか。



その当の本人は
「早く早く〜」と前を走りながら、時折振り返り
自分と虹とを交互に見て、前を向いてを繰り返していた。

「危ねェから、ちゃんと前見て歩きなせェ」
そう言って神楽の方へ歩を進めた。

そして、少し前で揺れている自分の物より小さな右手に、自分の左手を伸ばして握った。

すると、ビックリした顔が勢いよく振り返った。
しかし、何も言わず、そのまま大人しく歩調を合わせて歩きだした。



2人仲良く帰る、雨上がりの道。


後ろの空では、見事な七色の虹が輝いていた。




[終わり]

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