時間にしたら、1時間くらいだっただろうか。
それはそれは本気で遊んだ。
他の客が見に来るくらいのエアホッケーのラリーの応酬をしたり、
シューティングで、店の最高点超えても二人の勝負がつかなかったから、何度もやり直して、店長に「そろそろやめて」と言われたりした。
なんだか、やたらとスッキリした。
いつものことだが、コイツといるとちょっと気分が明るくなる。
無心にゲームに没頭できたことで、モヤモヤもだいぶ減った。
チャイナには少しだけ感謝した。
言わねェけどな。
ゲーム対決は楽しいのだが、いつの間にかギャラリーができて、やりづらくなってしまっていた。
「チャイナ、そろそろ出るかィ?」
と声をかけた
「そうアルナ。いい時間ネ。」
珍しく意見が一致したので、外に出た。
「あ、雨やんだアル」
「そうだな。濡れずにすみそうだな。」
「おうヨ」
チャイナは、たったったったと走りながらゲームセンターの軒下から駆け出す。
そしてこちらを振り返ったと思ったら
「あ!」
という声と共に自分のはるか後ろをに目の焦点を合わせた。
「虹が出てるアル」
その声につられて後ろの空を見てみると
まだ色は淡いが、三種ほど色が見てとれる虹が薄く架かっていた。
「へー、この時期に虹たァ珍しいな」
「綺麗アル」
神楽は満面の笑みで飛び跳ねている。
その笑顔を見ていたら、自分の心にまだ少しわだかまっていたモノや、やさぐれた感情が嘘みたいになくなっていて、とても穏やかな気持ちになっていることに気付いた。
チャイナのおかげ・・・か。
我知らず、軽く笑みが浮かぶ。
なァ、知らねェだろ?
俺がその笑顔にどれほど癒されているか。
その、底抜けにまっさらな純粋さにどれほど救われているか。
その当の本人は
「早く早く〜」と前を走りながら、時折振り返り
自分と虹とを交互に見て、前を向いてを繰り返していた。
「危ねェから、ちゃんと前見て歩きなせェ」
そう言って神楽の方へ歩を進めた。
そして、少し前で揺れている自分の物より小さな右手に、自分の左手を伸ばして握った。
すると、ビックリした顔が勢いよく振り返った。
しかし、何も言わず、そのまま大人しく歩調を合わせて歩きだした。
2人仲良く帰る、雨上がりの道。
後ろの空では、見事な七色の虹が輝いていた。
[終わり]
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