隣のお花屋さん2


という訳で、ちょっと裏まで回覧板を渡しに行くことにした。

裏手まで歩いていくと
店先に出て花に水をあげている人物がいた。
あの人か。と検討をつけて声をかける。

「もし、屁怒絽殿でありんすか。」
「はい、私が屁怒絽です。うちの花をお求めですか、お嬢さん。」
「いや、生憎じゃが、客ではないのじゃ。裏の坂田の家から回覧板を持って来たのじゃが、こちらで相違ないじゃろうか。」

「おや、わざわざ、ありがとうございます。
確かに受け取りました。
失礼ですが、坂田さんのご家族の方ですか?」

「い、いや、そうではありんせんが、あの…」
なんと言ったものかと言い澱むと

「あぁ、そうなんですか。
坂田さんも隅におけませんね」
何か分かったように頷いた、意外と感がいい屁怒絽。

「え?いや、あの…」
何かを言おうとして諦めた月詠。
そして代わりに尋ねた。

「屁怒絽殿は、ずっとこちらで花屋をしているのでありんすか?」

「いえ、ここに店を構えたのは最近です。
私はこの容姿ですから、
皆さん怖がってあまり近寄ってくれません。
でも、坂田さんたち万事屋の方たちは
回覧板を渡しに来ていただいたり、
銭湯で会ったりと何かと良くしていただいてるんです。」

「さようでありんすか。
越してきたばかりなのに色々と大変なのじゃな。
こんなに花々に目をかけ綺麗に咲かせる御仁じゃ
きっと、そのうちにその心の美しさが伝わるでありんしょう。
銀時はちゃらんぽらんなヤツじゃが、
万事屋の面々は真っ直ぐで性根のいい連中じゃ
何かと迷惑をかけておるじゃろうが
どうぞ、よしなにしておくれなんし。」
笑みを添えて頭をさげる。

すると、屁怒絽は表情がひどく分かりにくい顔ながらも、僅かに目を見開いて驚いていた。

「いやいや、どうか頭をあげて下さい。
よろしくお願いをしたいのはこちらのほうですし。」
ふっと目を細めてつづける。
「坂田さんは幸せ者ですね。
あなたのような素敵なお嬢さんがいらっしゃって。」

不意にそんなことを言われたので、月詠は照れてしまい
「え、いや、そんなことは…
というより、あやつは何も…」
必死に何か言おうとするが、言葉にならない。


「あっ、そうだ。
申し訳ありません。こんなところで立話をしてしまいまして。
お茶をいれますので、どうぞ上がって下さい。」

「いや、回覧板を持ってきただけなので…気持ちだけ有り難くいただきんす。」

「そうですか。
また是非遊びに来て下さいね。
おや、すいません、名前を訊き忘れていました。
私、屁怒絽と言います。
放屁の屁に、怒りの怒、ロビンマスクの絽と書いて屁怒絽です。」
「月詠でありんす。どうぞよしなに。」

和やかに自己紹介が終わったその時


「月詠ー」
と聞き慣れた覇気のない声が聞こえた。

「銀時、用事はおわったのか?」

「んなもん、頼まれてやるかよ。あいつ振り切ってきたんだよ。
ったく、ホント何かんがえてんだ、あのバカ…

で、オメーはこんなとこでなぁにしてんだぁ?」

「ああ、回覧板を渡しに来たのでありんす。」

「あーそういや、回し忘れてたな。」
(屁怒絽が怖くて回せてなかったんだけどね)

「屁怒絽殿にも迷惑するゆえ、止めるのはやめなんし。」
「へいへい。
んじゃ、帰っか。
ワリーな屁怒絽。」
くるりと体を向けて右手を軽く上げる。

「いえ、月詠さんとお話できて楽しかったですよ。
また遊びに来て下さい。」

月詠は頭をさげてから、
2人並んで歩き出す。





****************



「てか、オメーすげーのな。
屁怒絽と普通にしゃべってたよな。
あいつマジこえーのに。」
「人を見た目で判断するでなし。
とてもいい御仁じゃったぞ。」



[終わり]

2/2
[*前] | [次#]

[戻る]
[TOP]








「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -