あふれた夜8




膝立ちして、自分より下にあるその男の頬に手を伸ばし、顔をあげさせる。
「銀時」
と名を呼んで目が合うと、堪らずにその頭を抱き寄せ
「銀時・・・・」
もう一度名前を呼んだ。
そして、ぎゅっと背に回した手に力を込めた。

「だから、やめろって・・・言ったじゃねェか・・・」

そう言いながらも銀時は、月詠の体に腕を巻きつかせ
随分と久しぶりに抱きしめた女の体の感触と匂いに息を詰めた。


「いいんじゃ。
わっちは・・・・わっちがぬしに触れたかっただけじゃ。
あれからずっと、焦がれるように、ぬしの腕の中を忘れられなかっただけじゃ。」

「何、俺が恋しかった?」

「そう、じゃな。
不条理な関係を解消したことを後悔したことはないが
わっちゃ、ただ、ずっとぬしの心が欲しくて藻掻いていただけじゃ。
仮初でもぬしに愛された記憶に縋っていただけじゃ。」

銀時が動く気配に、月詠は腕をとき、その場にすとんと腰を下ろした。
すると銀時が今度は月詠の手首を取り、ぐいっと己の方へ引き寄せた。

体勢を崩しながら大きな男の体にすっぽりと抱きしめられる。


「結局、俺たちゃ、互いに言葉が足りなかっただけか。」

「そのようじゃな」

「つくづく不器用だな。」

「全くじゃ。」

ふふっと笑い合う。

力強い腕が背に回されている。
体に密着している肌から熱い血潮の流れる体温が伝わってくる。



知ってしまっているから
この背に回る腕の強さも、この体に触れる肌の熱さも。
そして、そこに付随してくる感情を、もう隠しおおすことはできないから

いい加減、素直になろう



「月詠」「銀時」

「好きだ」「好きじゃ」


聞こえた言葉に顔をあげて目を合わせると

「「知ってる」」

そう互いに言って
もう一度笑い合った。



【終わり】

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