比較的穏やかな1日だった。
特に大きな問題もなかったし、面倒を起こしそうな客も見かけなかった。
「たまには早めに上がったらいかがですか?最近ずっと働き詰めでしたし」
百華の皆にそう言われ
確かにここ暫く何かと立て込んでいて、働き通しだったなという事に気が付いた。
『たまには早く帰って、晴太におやすみを言ってやるか』
と思い、部下たちの言葉に甘えることにした。
その帰路に着く前、やはり念のために一回りだけ街を見回ってから帰ろうかと、入口の方へ向かった。
すると、どこかで見かけたような天然パーマ男がふらふらと歩いているのが目に入った。
「銀時、何をしておる」
「んあ?おー月詠。
今な、世界が回るっていう珍事に行きあってるトコなんだわ」
「酔っておるな。それも酷く。」
「なぁ〜に言っちゃってんの?銀さん、全っ然酔ってなんていねェから・・・
今ここでトリプルアクセルとかできちゃうから。」
「酔っ払いの『酔ってない』発言ほど信用できないものはないからな。
ほれ、歩けるうちにさっさと帰りなんし。」
「あんだよ、来たばっかじゃねェか。連れねェ事いうなよ」
「帰らぬと神楽が心配するじゃろう」
「あー大丈夫大丈夫。今日は、お妙のとこに行ってるから。」
どうにか帰らせなければ・・・と思案していると
後ろからやって来た若い男数人のグループの1人が、ドンっと銀時にぶつかった。
それほど強く当たった訳ではなかったようで
「あ、ごめんよ」
と軽く声をかけて若者は行ってしまったが
銀時は大きくよろけたかと思うと、パタリと地面に突っ伏してしまった。
そして、そのまま動かなくなった。
「オイ、銀時・・・
えっ、銀時?」
揺するわけにはいかないので、肩に手をおいて話しかけてみるが返事がない
だだの屍のようだ。
これは暫く意識が戻りそうもない事を悟ると、月詠は軽く溜息をついた。
そして、ちょうど近くを通った百華に手伝ってもらい、銀時をひのやまで運んだ。