あふれた夜6





比較的穏やかな1日だった。
特に大きな問題もなかったし、面倒を起こしそうな客も見かけなかった。

「たまには早めに上がったらいかがですか?最近ずっと働き詰めでしたし」
百華の皆にそう言われ
確かにここ暫く何かと立て込んでいて、働き通しだったなという事に気が付いた。

『たまには早く帰って、晴太におやすみを言ってやるか』
と思い、部下たちの言葉に甘えることにした。


その帰路に着く前、やはり念のために一回りだけ街を見回ってから帰ろうかと、入口の方へ向かった。
すると、どこかで見かけたような天然パーマ男がふらふらと歩いているのが目に入った。


「銀時、何をしておる」

「んあ?おー月詠。
今な、世界が回るっていう珍事に行きあってるトコなんだわ」

「酔っておるな。それも酷く。」

「なぁ〜に言っちゃってんの?銀さん、全っ然酔ってなんていねェから・・・
今ここでトリプルアクセルとかできちゃうから。」

「酔っ払いの『酔ってない』発言ほど信用できないものはないからな。
ほれ、歩けるうちにさっさと帰りなんし。」

「あんだよ、来たばっかじゃねェか。連れねェ事いうなよ」

「帰らぬと神楽が心配するじゃろう」

「あー大丈夫大丈夫。今日は、お妙のとこに行ってるから。」


どうにか帰らせなければ・・・と思案していると
後ろからやって来た若い男数人のグループの1人が、ドンっと銀時にぶつかった。
それほど強く当たった訳ではなかったようで
「あ、ごめんよ」
と軽く声をかけて若者は行ってしまったが
銀時は大きくよろけたかと思うと、パタリと地面に突っ伏してしまった。
そして、そのまま動かなくなった。

「オイ、銀時・・・
えっ、銀時?」

揺するわけにはいかないので、肩に手をおいて話しかけてみるが返事がない
だだの屍のようだ。

これは暫く意識が戻りそうもない事を悟ると、月詠は軽く溜息をついた。

そして、ちょうど近くを通った百華に手伝ってもらい、銀時をひのやまで運んだ。

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