バイクの後ろに月詠を乗せて、海岸沿いを走る。
月詠の腕が自分の腰に回っている。
初めは、恥ずかしがってなかなかしっかり掴まってくれなかったが、最近は何も言わなくても自然に手が巻かれるようになった。
丁度いい力の入れ具合も分かってきたようで、バイクの2人乗りも板についてきたもんだ。
暫く、海を横目で見ながら道を進む。
「ホワイトデーのつもりだったんじゃろう?」
ふいに、後ろから月詠の声が耳に届いた。
「え、何言ってんの?全然そんなんじゃないから。全く関係なんてないからね。」
え?何、ホワイトデーってイベント知ってたの?そういうの覚えてる方だったの?
いや、そんなの意識したわけじゃねェけど
でも、金ねェし。だいたい欲しい物なんてないって言うだろうし、適当な物をプレゼントしたところで困るであろうことは目に見えてたし
それなら、何処かに
―行きたい所、見たい物を見せに―
外に連れて行ったほうが楽しいだろうか・・・
なんて、思ったり思わなかったり、いや、思ったんだけどな。
「ありがとうな、銀時」
柔らかい声音で礼を言われた。
そして、腰に回されている手にギュッと力が込められた。
まぁ、俺にゃこんなことぐらいしかできねェけど
こんなホワイトデーも悪かねェだろ?
【終わり】