静心なく2


お弁当を食べ終わると、神楽・晴太が新八を引っ張って公園内を走り回りながら
遊びだす。

それを
「ガキは元気で何よりだねぇ」
とかいいながら片付けをする保護者2人
いや、銀時と月詠

片付けが終わり
銀時はお茶でも飲もうと水筒に手を伸ばした。
月詠がくつろぎながら、上を見上げ、桜を見ているのが目に入る。
その表情は彼女にしては珍しい、楽しげな少女のような笑顔だった。

驚いて思わずドキリとする。
(こいつこんな顔もするんだな)
なんて思って
いやいやいや、何ちょっと意識しちゃってんの、俺
これは、あれだ、有名人がいたらみんな取りあえず写真撮っとく的なヤツだ。
そうだ、そうだ。

自己完結しかけたところで彼女が声をかけてきた。

「ぬしには礼を言わねばならぬな。
満開の桜がこんなに綺麗なものとは知らなんだ。
しかし、ぬしがああやって強引に連れ出してくれなければ、わっちは自分から見に行こうとは思わなかったじゃろう」

男は僅かに目を丸くしてからいつもの目に戻り
「そんな大層なことしてねーよ。
礼なら今年も綺麗に咲いてくれた桜の木たちにいっとけ。」

そして、すこし考え込んだあとにぽそりと思い出したように続けた

「俺な、昔、桜が綺麗だと思えねぇ時期があったんだ。
満開の桜を見ながら『もっと綺麗な薄紅色じゃなかったか?たいしたことねーな
ぁ』って言ったらよ、隣にいたヤツが『そう思うのは、お前の心が疲れているからだ。何を悩んでるのだ、言ってみろ』とか言われてな。
そんときゃ、何言ってんだコイツって思ったけど、今考えれば、結構そうだと思うんだよ。」

遠くを見るような目で話していたが、視線を元に戻して続けた
「なんか、話逸れたな
まぁ、あれだ、取りあえず、オメーがこの桜見て綺麗だと思うなら、今わりといい人生送ってるってことじゃねーのか?
あとは普段頑張ってるご褒美にお天道さんが満開と晴天にしてくれたんじゃね?」

「…うむ。
そうじゃな、わっちは今、幸せな生活をしているのう。
…のう、ぬし、今日の桜、綺麗じゃと思うのじゃろう?」

「んぁ?あー綺麗だと思うぜ。」
「では、ぬしも今幸せなのじゃな。良かったのう。」
そう言って彼女は柔らかく花が綻ぶように笑った。

そして言葉を失っている男をそのままに、子供たちの方へ、そろそろ帰るぞと言いに言ってしまった。
暫く笑顔に見惚れていた銀時は
はたっと我に帰って

い、いやいやいやいや
ち、違うからね、あれだから
なんか桜がキレイで?
天気もよくて?
なんか顔色とか顔映えとか良くみえるじゃん?
しかも笑顔なんてレアだし?

としばらく百面相を続けていた。

そんな彼を見ていたのは大きな桜の木々と風に揺れる花びらだけであった。


[終わり]

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