惑い月5




現場に着くと
5人の攘夷志士とそれに力を貸したであろう遊女を百華が囲んでいた。

「あ、頭!!」
「現状は?」

「はい、志士が暴れまして、馴染の女郎を人質代わりにしています。
女の方も男に手を貸すつもりのようで、迂闊に手が出せません。」

「あい分かった。フォローは頼んだぞ」

よくあるパターンだ。
女が男と行くつもりなのが余計にややこしい。
クナイを構えながら、リーダー格の男の前に出る

「ぬしら、大人しく武器を捨てなんし。
命までは取りたくないゆえ。」

「へっ、この状況を見てそれを言うのか?
百華とやらの頭領さんよォ」

自分の力を過信して、力量の計りきれない輩らしい。
面倒この上ない。

「忠告はしんした。
では、参る」

すばやく飛び上がり、5人の急所にクナイを投げる。
その後、女郎の傍に降りざま、その首後ろに手刀を入れた。

珍しく決めそこねたようで、失神させることができず、脳震盪をおこさせたようだった。
抵抗しなければそれでよいので、女を抱えて包囲網から脱し、部下に女を託す。
そして、まだ抵抗してくる意思のある浪士数名に致命傷を負わせる。

最後に主格の男が飛びかかって来たので切り捨てた。
ザクリと獲物が深く埋まる感覚に
あぁ、これは命を奪ってしまったな。と冷静に思った。
予想に違わず、男の体はドサリと力なく鈍い音を立てながら崩れた。

まだ息のある者を捕縛するよう部下たちに指示を出す。
数人がバタバタと動いたところで、つんざくような叫び声が聞こえた。
女郎が声をあげられるくらいに回復したらしい。

「なんで、なんで、こんなこと・・・・
なんで・・・・この人は悪い事なんてしていないのに・・・・
鬼、死神。なんで殺すのよ。
許さない。絶対に許さない。
あんたなんて・・・・地獄に落ちたらいいわ」

聞き慣れた呪詛が吐きかけられた。

「あぁ、地獄に行く覚悟はとうにできておる。
ぬし、悪い男につかまってしまったのう」

こういった事件があった時には、言われている事。
平気になるといった手合いのことではないが、そういう物だと割り切って過ごしている。
しかし、今日はいつもより心を抉られた。


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