惑い月4




夜、屋根を伝いながら見回りをしている最中、また何の気なしに空を見上げると、雲のない綺麗な下弦の月が出ていた。
これだけ明瞭に見える事も珍しい。

少しの間、見とれていると下から声がかけられた

「随分と高い所で月見してんじゃねェか」

やる気のない声と立ち姿がすぐ下の地面にあった。
それを認めると、その横に降りた。

「ぬしが夜に来るのは久しぶりじゃな」

「遊ぶ金ねェからな」

ならば何をしに来た・・・と言いかけてやめた。
ここ数日は来ていなかったが、恐らく自分を、正確には自分の周りに居るものを心配して見に来てくれたのだろう。

「なんだかな、月に引き寄せられそうに見えてなァ。儚く消える前にと思ってよ。
こっち振り返ってくれてよかったぜ」

「かぐや姫ではあるまいし、月に行くなんて出来るはずなかろう」

言いたい事は分かるが、敢えて的を外して返す。
月に魅入られていたのは事実だ。
だからと言って、この男の言うところの『ひっぱり込まれる』ということはないと思うが


数分間立ち話をしていたら、ピィーっと百華が呼子を鳴らす音が聞こえた。

銀時には
「すまぬ。ひのやには日輪もおるから、茶でも出してもらってくれなんし。」
それだけ告げると、音のした方へ走りだした。

後ろから
「おー」
という声が風に乗って聞こえた。


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