一子相伝〜坂田家の場合〜


○銀月夫婦設定 子あり設定 兄10歳・妹8歳 息子視点○




おやつの時間も過ぎ、お母さんが夕飯の買い物に出かける姿がちらほら見受けられる平和な時間帯に
この家庭では、少しばかり違う光景が広がっていた。

坂田家の長男が、ソファーに座ってジャンプを読もうとしていると
窓側の壁からズガガガガガガガガと、硬いものがものすごい速さで刺さる音がした。

(あぁ、またか)
と思ってそちらに目をやると
思った通り、いつも通り
父親が母親のクナイに磔にされていた。

「ぬし、いいかげんにしなんし。糖分取りすぎじゃ、
何も禁止と言っているのではない、控えろと言っておるんじゃ!!」

「違いますー俺じゃありませんー。定春が食べたんですー」

「見え透いた嘘をつくなぁぁぁぁぁぁー!!」
ズザザザザと、また刺さるクナイの量が増えた。

(あぁ、はいはい)
と息子は何もなかったようにジャンプを読み始めたところで
玄関がカラカラと開いて、妹が帰ってきた。

「ただいま。
あれ、お兄ちゃん、お母さまとお父さま、またやってるの?」
「おーおかえり。
おう。また理由もいつもと同じでな。よくやるよな」

両親のいい争いとクナイの音をBGMに兄妹が話をする。

「ぬしの体を心配して言っておるんじゃ。
ぬし、わっちが居ない時も食べておるんじゃろう?
ぬしが自分で止めなければ、止めてくれる人がおらんのじゃぞ。
分かっておるのか?」

「だーかーらー、大丈夫だって言ってんだろうがぁ。」
「何が大丈夫なんじゃあぁぁぁー」
ズガガガガガガガと声とクナイの音は止まらない。


興味なさそうにジャンプを読む息子。
その横には、何故か少しキラキラした目で、母を見ている娘。

その表情に気付いた兄は不思議に思って、何を考えているのか訊こうとしたが、
その前に
意を決したように、妹が声を発した。


「お母さま、私にクナイの使い方を教えて下さい。」

その言葉にビックリした家族は全員で娘を見た。

「それは、また突然どうしてじゃ?」
母、月詠がまず口を開いた。

「私にクナイが使えたら、お母さまがいないときにお父さまがお菓子食べても止められると思うの。
お母さま、お願いします。」

その発言に、またしても家族全員が思わず言葉を失うが
月詠が答えた。

「そう、じゃなぁ。それもありかのう。
よし、分かった、少し手ほどきしてみようかのう。」

「え?えぇぇ?何言っちゃってんの?お前ら。
つーか何、月詠、お前、そんな理由で納得したの?」

「だまりんす。
わっちが出来ない分を、子供が健気にもやってくれようとしているんじゃ。
ありがたいと思いなんし。

よし、では、明日から始めるぞ。」

「はい、よろしくお願いします、お母さま!!」



こうして、母の技は子へと受け継がれていく。

一子相伝



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