真紅に酔う2


風呂を上がり、自室の襖の前に立つと中に人の気配がした。
「また勝手に入りおって」
と思うものの、出てくるのは溜め息ではなく微笑みだった。

しかしいつものポーカーフェイスでスパンと襖をあけた。
案の定、片肘で寝そべった銀時が顔だけこちらに向けて
「おー早かったじゃねぇか」
おかえりの代わりのように言ってきた。

「ぬし、まず始めに『勝手に入って悪い』とか『お邪魔してます』とか言えんのか」
「んぁ?あー邪魔してるぜ」
「もうよいわ、分かったおったわ。」
ふぅっと軽く息を吐きながら座った。

「なぁ、オマエ、それ…」
指差してきたのは足元。

「あぁ、今日、休憩時間に部下にやってもらったんじゃ。」

「その色、オマエが選んだの?」
「いや、面倒で全て任せていたら、あれこれ色を選ばれて塗られてしまったんじゃ」
「ふ〜ん、まぁ、確かにオマエじゃ選びそうにない色だな」
「そうじゃな。わっちも塗るなら違う色をと言ったんじゃが、押し切られてしまいんした。」

「いや、でも流石、吉原の女。センスいいな。
似合ってんぜ、その真紅に近い赤。

すっげーエロイ。」

「世辞ならいらぬぞ。言われたしな。」
「俺ァ世辞なんざ言わねーよ。」


ん?と思い、顔を向けると、射抜くような男の眼をした銀時と目が合った。
ドキリとして反射的に顔を背ける。
2人で居る時にしか見せない、なんとも男を感じるその眼が苦手だった。

そんな顔をされて、どうしていいのか分からなくなってしまうのに
その眼が含んでいる欲情が伝わって引き寄せられてしまう。
そして拒めない。


銀時は月詠の左の足先をすっと掴むと自分の口元まで持っていき
足の親指をパクリと口に入れた。

今まで足指に感じたことのない、生温さと柔らかな口内の感覚に
体がビクリと揺れた。
舌先でちろりと指の付け根を弄ぶように舐めてから
ちゅっと音を立てて口を離された。
それだけで、ぞわりとした感覚が背中を駆け上がり
力が抜けてしまったのが自分でも分かる。

「な・・にを、するんじゃ」
それでも、なんとか抗議の言葉を口にすれば

「顔真っ赤だぜ。それに、エロイ顔。何、そんなに気持ちよかった?」
「たわけ。そんな訳ないじゃろう。」
「ふ〜ん、あっそう。
まぁ、こっちの足もまだあるんだけどね。」

そう言うと、今度は右足が口元に運ばれた。

さっきよりも、早い舌の動きと強い吸いつきに耐えられず声をもらす。

そして、「あぁ、もう好きにしてくれなんし。」
強がることを放棄した。


それは真紅に酔った男と女の
真夏の夜の始まり。
獣のように猛はサガ。




終わり

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