真紅に酔う


休憩で詰め所に戻ると、早番でもう上がった数人の百華がきゃきゃと楽しそうに話していた。

特に興味があったわけではないが、そちらに顔を向けていたらしい。
1人が気付いて声をかけてきた。

「頭も如何ですか?シセードーのマニキュア、夏の新色ですよ。」
「いや、わっちは良い。」
「何言ってるんですか。見せる人がいらっしゃるんだから、おめかしして下さいよ。」
「しかし、手の爪にしても、すぐ削れてしまうじゃろう」
「あら、だから、百華はみんな足にしてるんですよ」
「足?」
「そうですよ。ペディキュアっていうんです。
あ、試しにやってみましょうよ。」

いらないと言っているのに、さぁさぁと促され
なぜか網タイツを脱がされた。

「どの色がいいですか?」

見ると色とりどりの小瓶が並んでいた。
ピンク・オレンジ・赤・黄色・緑・青・ベージュ・ゴールド・シルバー
見ているだけで心が踊るような綺麗な色だった。

「じゃあ、ベージュで」
と即答したら

「何言ってんですか!
肌白いんだし、もっと映える色にして下さい」
「そうねー髪の色と合わせてゴールド?
敢えてシルバー?
着物柄に合わせてオレンジもありかしら…
この真紅も捨てがたいわよね〜」

もう好きにしてくれと思い、任せることにした。
あーでもないこーでもないと言っていたが、割とすぐに決まったらしく、慣れた手つきで足の爪に色を落としていってくれた。

「出来ました!!やっぱり、この色で正解でしたね。よくお似合いですよ。」
「世辞はありがたく受け取っておく。ありがとうな。」
すぐ乾いたので網タイツを履き直し、礼を言って仕事に戻った。



足の爪というのは普段靴やタイツに隠れていることが多いもので
その後、ペディキュアをしてもらったことなどすっかり忘れていた。
思い出したのは脱衣場で足元が目に入ったときだった。

初めこそ見慣れないな…と思って、やたらと足元の色を確認していたが
すぐに違和感がなり、目がいっても気にならなくなった。

→続く

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