roses are red 3




勇気が要ったが、沈黙を破る。
「この時間まで1人教室で何やってんでィ?」

「オマエこそ、なんでまだ残ってるネ」

「俺ァ、課題提出しに行ってたんでィ」

「その後、なんでここに残ってるのかって訊いてるアル」

「あ?特に理由はねェけど?」

「そうアルカ。じゃあ、私も特に理由はないアル」

何なんだよ。
相変わらず可愛くねェな。
そりゃ俺も一緒か。

はぁぁ・・と大きめな溜息を吐き出してから、意を決して言葉を発する。
得意のポーカーフェイス声で

「おい、チャイナ
その、チョコ。余ってんなら俺がもらってやるから、寄越しやがれ」

すると、大きな目を見開いたチャイナがバッとこちらに顔をむけた。
ここ数日ぶりに、ちゃんと目を合わせた気がする。

「な、何言ってるネ。これは、そんなんじゃ・・・・」

「まぁ、無理にたァ言わねェけどな」

「要らないって言ったくせに、今更何言ってるアルカ」

「オメーが、手作りして、それを俺にくれるってんなら、欲しいって言ってんでィ」

「なっ・・・!!」

「で?」

「違うネ。これは余ってなんかいないネ。
これは・・・これは・・・・
渡すつもりなんかなかったけど、渡せるなんて思ってなかったけど
何故か持って来ちゃったオマエ用アル。
だから、余ってるからあげるとか、そんなんじゃないアル。」

おぉ、予想外の返答

「じゃあ、俺ァそれ貰えんだろィ?」

「あげないネ」

「なんでだよ?」

「オマエは要らないって言ったネ」

「適当な義理ならいらねェよ」

驚き顔をしたチャイナの目は、涙が少し溜まったまま更に見開かれた。

「で?」

「義理じゃないアル」

「じゃあ、くれ」


数秒の間、迷ったように手を彷徨わせてから
チャイナはゆっくりと、僅かに震えながら紙袋を差し出してきた。
俺はそれを両手で受け取った。

「サンキュ」

あぁ、俺は今結構いい笑顔を浮かべているんだろうなぁ
なんて事を、真っ赤な顔を下に向けたまま照れている隣のチャイナを見ながら思った。




ってェ訳で
『バレンタインは例え五円玉チョコでも、もらえるだけで嬉しい』

なんてェ話をよく聞きやすがねィ
そりゃあ、言葉の綾ってもんでさァ

貰うなら、ちゃんとしたヤツをほしい相手から貰わなきゃ意味がねェ

だから、要らねェやつらからほしくもねぇチョコレートなんざ受け取る義理はねェんでィ

で、欲しいヤツから、手作りチョコをもらえた俺は勝ち組ってェ寸法なわけでさァ


その後どうなったかってェ?
それを訊くのは野暮ってもんでさァ


お後がよろしいようで



【終わり】
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