千夜月待〜ひととせ〜U
こんな夢を見た
通りを歩いていた。
横には1人の女を連れていた。
背の高い女のようで、自分の顎の辺りに顔があった。
出来心から、その頭にポンと自分の掌を乗せてみる。
すると彼女は驚いて、勢いよくこちらを振り向いた。
顔の作りはぼんやりとして思いだせないが、普段見られないようなビックリした表情が見られた事にやたらと満足して、ニンマリと笑った。
そこで目が覚めた。
手に、さらさらとした絹糸のような髪の毛の感触が残っていた。
あれは誰だったのか。
随分と馴染んだ光景だった気がするから、身近にいる女性だろうか・・・
そんなことを朝食後ソファーに座りながら、取りとめもなく思いめぐらせていた。
つっと視線の先に神楽の頭を捉えたので、試しにポンと手を置いてみる。
すると、自分の肩の辺りにある顔がこちらを振り向いて、ニカっと笑った。
違うな。
こうじゃなかった。
もっと近い高さに顔があって、慣れないことをされて戸惑った表情をしていた。
その振り向いたその顔に笑いかけたのは俺の方だった。
そして、笑みを浮かべたまま、少しだけ屈めば同じ高さになる彼女の唇に触れた気がする。
そこまで思い至ったところで、ズキリと鈍い痛みが後頭部に走った。
あぁ、また頭が痛み出した。
「新八ィ〜、俺ちょっくら出掛けてくらァ」
「え?どこ行くんですか?」
「え?それ聞いちゃう?ダメだよ、ぱっつぁん、詮索はするもんじゃありませーん」
「どうせパチンコネ。マダオ銀ちゃんが行くとこなんて大体相場が決まってるアル」
「か〜ぐらちゅわ〜ん?ちょっと酷くない?傷つくから、銀さん傷ついたから、夕飯まで帰ってこねェから。
あ、飯はカレーな。じゃ、頼んだぜ、ぱっつぁん」
いってきますの代わりに、後ろ姿のままひらひらと手を振り
そのまま後ろ手でガラガラ、ピシャっと玄関の引き戸が開閉された。
続いて響く階段を降りて行く音が遠ざかっていった。
ふうっと新八が溜息をつく。
「なんか、銀ちゃん変だったアル」
「そうだね・・・何か思い出したのかな?」
「それならもっと慌てるはずアル」
「そうだよねぇ・・・」
「新八、私たちがしたことは正しかったアルカ?
いくらツッキーの最後の頼みとは言え、ちょっと銀ちゃんが可哀想に思えるヨ」
「分からないよ・・・・
でも、月詠さんの頼みだったからって言うのもあるけど、あれは、僕が銀さんを見ていられなかったって言うのもあるんだよね・・」
そして遠くを見るように昔の光景を思い出す。
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