千夜月待〜ひととせ〜T



こんな夢を見た


眠っている自分の横に、誰かが寝ている。
それはとても見慣れた光景で、自分はその人に腕を回した体勢で横になっている。
相手は自分の胸に顔を埋めるように眠っている。
腕と胸に伝わる柔らかい感触に『ああこの人は女なんだな』と思う。
その人の体を引き寄せようと、少しばかり腕に力を込めようとしたところで
目が覚めた。



つい先ほど見ていた夢と同じように横向きに寝ていた銀時は、その横に出来た虚空の空間へ遣る方なく腕を伸ばしていた。




あの柔らかな感触はなんだったのだろうか。

『柔らかいもの』としてすぐに連想されたのは定春だ。
試しに抱きついてみる。
モフっとした毛並みが気持ちいい・・・と思う間もなく、ガブリと頭から噛みつかれた。

違う。違う。これじゃない。
と、全力で自分の体を定春からひっぺがしながら確認する。
あの感じがこんな・・・生温かいというよりも、ぬるっとした血を頭からダラダラと流す、なんて物騒なモンであってたまるかってんだ。
ありゃあ、もっと穏やかな充足感みてーな感じだったと思うよ、うん。

さわり心地もこんなんじゃなかった。
もっと・・・・
そう、もっと体温が近い暖かさを伴っていた。



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