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初恋なんて叶わないもの。
儚く、一瞬で終わるもの。

世間の一般論もそうだろう。
初恋なんて、永遠に続かない。

若い頃の火傷のようなものだ。

でも……




火傷の傷は、容易には消えない。





〜First Love2〜




齢16歳。ただいま成長期真っ只中。そんな青年はこの話の主人公、ではなく、恋人だ。
名を来栖雄也という。

決して目覚めが良い方だとは言えない彼は、自分の恋人がまだ夢の中に居る頃起き始める。季節は2月下旬。暦の上ではもうすぐ3月だというのに、春はちっとも顔を、いや、鼻の先すら見せてくれない。昨夜もしんしんと降り続けた雪が、近所の屋根に薄く広がっている。もうとっくに太陽が目覚めているはずの時間帯なのに、外は夜みたいに暗い。

と、そんなことを確認する暇も無く、ベッドの上で半身を起こしてぼんやりしていた彼は、寒いことに気がついて身震いした。

「さっみ。…リモコン」

発した声は、情夜を髣髴させる掠れ声。
機械音と同時に、ベッドの頭上に取り付けられたエアコンの送風口がぱっくりと口を開く。
そもそも、寒いのは当たり前だ。衣服を身に着けていないのだから。
エアコンから送られる風は直接当たらない所為か、まだ己を暖めてくれる気配がなかった。それどころか、また睡魔が襲ってくる。
今日は朝飯当番だから早く起きなければ。そう思い計画的に、携帯のアラームを7時にセット。今からゆっくりと覚醒していけば、恋人が目覚め始めるだろう9時にはじゅうぶん間に合うはずだ。ところがだ。いくら待ってみても、起きられる気が少しもしてこないのはどうしてだろう。急に苛立ちを感じた彼は、身なりを気にする事無く前髪を掻きむしり、再びシーツに潜ってしまった。
振動を感じたのか、隣で恋人の背中がもぞもぞ揺れる。

小さく、抱き締めてしまえば壊れてしまいそうな、か細い四肢。だが女を経験したことがある彼は、それと違うことははっきりと認識している。筋肉のつき方、角ばった骨の強さ。特に、中学時代鍛えていて、バイトをしているおかげで落ちる気配の無い筋肉は健在だった。腹筋は割れてすらいないものの、情事に自分を受け入れる間、その姿を表す。それはなんとも煽情的で、彼の理性をおかしくさせる要因でもあった。きっとそんなことを披露すれば、また「変態」と笑われるに違いない。そんな笑顔もきっと、可愛い。

たまらない。
どんな姿も、表情も。たまらなく愛おしい。

どうしようもない苦しさが胸を焦がし、彼は恋人を自分の胸へと抱き寄せた。昨日無理をさせたからか(いつものことだが)、またしても眉根を動かしただけで寝息を立て続けている。

思いがけず温もりを見つけた彼は、誘われるがまま、再び眠りに落ちていった。







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