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「俺、何もプレゼント用意してないし!お腹いっぱい食べさせてもらって、この上何か貰うなんて…」
「食事くらい、いつもしてるだろ?…俺が誰かにクリスマスプレゼントなんて、初等部以来なんだからな」
「え?ごめん聞こえなかった」
「…いいから!受け取っとけって!俺がお前のために選んでやったんだから、突っ返されても困る!」
ぐいぐい押し付けられて慌てて手を添えてしまってから、雄也くんは俺にプレゼントを持たせると、そそくさとどこかに行ってしまった。
「えっと…、じゃあ、開けるよー…」
確かにせっかく選んでもらったんだから拒むのも悪いと思い、本人に届いたかは分からないけど声を掛け、包みを開けた。
中から出てきた滑らかな手触りのマフラーに目を瞬く。
「た…っ」
高そう…!!
もしやこれは貧乏人でも知っているカシミヤとかいうヤツではないか!
「どうだ?気に入った、か?」
キッチンから出てきた雄也くんは二人分のコーヒーをテーブルに置くと、「貸してみろ」と、唖然としている俺の手から簡単にマフラーを取り、首にかけてくれた。
首筋をカシミヤが優しく撫でる。
何度か調整したあとで、雄也くんは満足そうなため息をついた。
「ん…、いいんじゃね?店で3時間悩んだ甲斐があったな」
3時間?え、これ、俺のために、3時間?
呆気にとられる俺に気付いた雄也くんは、ついでに自分が余計なことを口走ったと気付いたらしい。あわあわと口を開けたり閉じたりしたあとに、急いでコーヒーを口に流し込もうとするが、淹れたて熱々だったらしい。
「ゴホッ!ぅあっちぃ!」
予期せぬ事態に大慌てでコーヒーごとキッチンに引っ込む雄也くん。
「ぷっ!あははははは!」
いつも見た目も所作もかっこいい雄也くんが起こしたとは思えない珍事件に可笑しくなって、俺は大声で笑ってしまった。いつも大人びて見える雄也くんが年相応に見える、とっても意外な一面だった。
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