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部屋に入ってからが本番だった。
豪勢な料理が出てくる出てくる…。
デリバリーとお手製の料理で揃えたと、ぶっきらぼうに話してくれた雄也くんは、照れているせいで少し口数が少なくて、可愛いとか思ってしまったのは秘密だ。

そんな料理を食べ終えた時にはお腹がパンパンになってしまって。こんなに食べたのはいつぶりだろうと、食器を片付けるのを手伝いながら笑ってしまった。

今はというと、テーブルを片付け終えて、可愛いサイズの苺のホールケーキを2人で分け合っている。
生クリームの上品な甘さと、苺の瑞々しい甘さが口いっぱいに広がる。俺はほっぺが落ちそうになって慌てて頬を押さえた。

「んまふぎう…」

値段的に高そうな箱から出てきたのに、お酒を使ってる感じがない、シンプルなケーキだ。
前に一緒に出かけた時に、「お酒が入ったケーキってあんまり好きじゃないんだよね」って言ったのを覚えててくれたのかもしれない。

「はむ……ん?」

さらにもう一口。フォークを咥えたところで視線を感じて顔を上げると、ソファに座っている雄也くんがいた。普段では有り得ない、とても柔らかな笑みを浮かべていて、ドキッとする。俺に見られていると分かった途端に目を背けてしまった雄也くんは、慌てて自分のケーキを口に運んでいる。

「美味しいね、雄也くん」

「んっ?ああ……」

「ふふっ」

理由は分からなかったけど、慌てる雄也くんがおかしくて笑ってしまった。


「満足か?」

ややあって、完食したケーキのゴミを片付けて戻ってきた雄也くんが、少し首を傾げてそう聞いてくる。

「うん、それはもう!ほんとにありがとう!こんな贅沢なクリスマスは初めて、で……」

興奮してまくし立てる俺の前にスっとラッピングされた包みが差し出される。それを見て、言葉を失ってしまった。

「ん…、やる。開けてみろ」

「え…?これって…」

「プレゼント、だろ」

今日この日にプレゼントなんだから、クリスマスプレゼントなのは分かる。

「こんな、貰えないっ」

綺麗なイルミネーションが見れた。美味しいご飯を食べて、ケーキを食べて、お腹もいっぱい。何より雄也くんと一緒に居られて嬉しかった。これ以上受け取ったらバチが当たりそうだな気がして、差し出されたそれをなかなか受け取る気にはなれなかった。
雄也くんに何かプレゼントを持ってきてたら良いけど、そんな準備もしてないし。






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