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ポケットの中で手を繋いだまま歩調を緩めて、奇麗にライトアップされた並木道を並んで歩いた。街路樹を見上げながら、道路側を歩いている雄也くんの顔を盗み見る。ライトに照らされて影ができた雄也くんの顔はとても幻想的で見惚れてしまう。景色よりも、断然目が奪われた。
視線を感じたのか、前を向いていた雄也くんがちらりとこちらを向く。
咄嗟に目を逸らすことができずに気まずい思いで微笑むと、お返しとばかりに優しい笑みを見せてくれた。あまり見たことがないその表情に、トクリと胸が鳴る。
まさか、クリスマスにこんなに穏やかな気持ちになれるなんて思わなかった。これも全て、寒い中待っていてくれた雄也くんのおかげだ。


「今日のバイトのあがり時間、言ってたっけ?」


ふと疑問に思った俺が横顔を見上げながら尋ねると、雄也くんは首を横に振った。


「いんや。聞いてねえから2時間くらい待った」

「え!!ご、ごめんなさい…」


申し訳なくて慌てて頭を下げると、ふっと笑う気配があって恐る恐る顔を上げた。


「待ってる間ずっとお前のこと考えてたから、退屈しなかった。ああそうだ…」


なぜ俺に?ってくらい不思議なほど甘い笑みでそう言うと、よく見たら含みのある笑みともとれる顔を近づけてくる。


「なっ、なにっ?」


どぎまぎしながら遠ざかるように身を引くと、ポケットの中で繋がっていた手を強く握られ、どうやっても離れられなかった。赤くなって更に焦っていると、その隙に耳元に寄せた雄也くんの唇から、熱い熱が伝わってくる。


「寒かったから風邪ひくかもな…。もちろん俺のこと、看病してくれるだろ?」


くすぐるような囁きに、俺はドキドキしっぱなしだった。
無言で心臓を抑えるのに必死だった俺の顔を見て、身体を寄せあったまま雄也くんがまたいたずらに笑う。


「風邪の原因はお前だから。拒否権はねえぞ」

「う、ん……」


やっとのことでそう答えると、雄也くんはやっと身体を離して、繋いだままの手をぎゅっと握りしめてきた。歩き出した隙に横顔を盗み見てみると、楽しげに口元が弧を描いている。

今日また雄也くんの新しい一面を見たような気がして嬉しかった。雄也くんにこんなお茶目な?顔があったなんて。そして新しい顔を見るたび心臓が痛く高鳴ってしまう。イケメンパワー恐るべし!なのだ。
俺の看病でいいなら付き合いましょう。弱って寝込むイケメンなんてなんて美味しいんだ。早く見たい。…なんて不謹慎かな。





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