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素敵な人と友達になれて良かったな。
こみ上げた喜びをマフラーに隠しながら処理していると、また急に雄也くんが動く。
少し強めの力で腕を引かれた。
何事かと見上げると、苦虫を噛み潰したような表情をしていて…。何か変な事言ったかなと考えた途端にその引っ張られるまま歩き出した。


「雄也くん?」


足がもつれないように慌ててついていきながら、その大きな背中に声をかける。
陸よりも細身で、でもがっしりとした男の人の体躯。
俺の声が届いたのか、半歩前を歩いていた雄也くんは腕を掴んだまま立ち止まって振り向いた。
その顔はさっきのままだ。


「アイツは「陸」で、俺は雄也「くん」ね。…気に入らねえな」


少し恐い気もするしかめっ面で、すごく不機嫌そうだ。
どこか言葉の節々に棘を感じる。


「えっと…?」


何が言いたいのか分からなくて首を傾げると、その間に腕を掴まれる感覚が消え、指先に温もりを感じて息が詰まる。


「俺のことは、「雄也」でいい」


そのまま俺の右手は雄也くんのピーコートのポケットの中へin。あろうことか恋人繋ぎまでされて慌てた。
雄也くんはすっかり余裕の表情に戻っている。


「ちょ、ちょっと、雄也くんってば!」

「呼び方変えるまでこのままな。つか俺は別にこのままでもいいけど」

「よくないって!みんなが見る…っ」

「みんなってだれ。だれも見ちゃいねえよ。それぞれの相手のこと以外はな」


横暴だ!へ理屈だ!さっき1人で待ってた時注目されてたじゃないか!
色々浮かんだけど、何も反論できずにマフラーに口元を埋めた。今何を言ったって照れ隠しでしかない。だってこんなに、熱を感じるんだから。


「お前に見せたいものがある」


そう言うと共に恋人繋ぎの手に力が入る。
俺は男らしい雄也くんの行動にどきどきしながら聞き返した。


「…見せたいもの?」


「おう」と白い息を吐きながら楽しげに笑う雄也くん。
俺と一緒に居てこんな顔をしてくれるなんて嬉しいな。


この時はまだ知らなかった。雄也くんが俺のために、どれだけ頑張ってくれたのかを。





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