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裏口から出て細い路地を抜けようとした途端、耳に女の子の騒ぐ声が聞こえてきた。


「あのひとかっこいい!」
「1人なのかな?」
「そうなんじゃない?彼女いないのかなぁ。もったいない…」
「声かけてみなよ!」


「………あ、」


街路樹に寄り添うようにして立つひとつの影。
まさか。と心臓が大きく高鳴る。
期待しないと思っていても可能性がある以上通り過ぎるわけにはいかなくて。
いつもよりゆっくり歩いて近づくと、その人影は俺の方を向いて、歩み寄ってきた。
間違いなく、雄也くんだ。
高そうなピーコートに身を包んだ姿がとても人目を引いている。あと一歩で距離がなくなるくらいで向かい合って、お互いに立ち止まった。
真ん中にボリュームがある髪が冷たい風でふわりとなびく。


「おつかれ」


久しぶりに聞く雄也くんの生の声は不思議なほど心地良く耳に響いた。
心から安心できる声色に顔を上げたまま頬が緩んでしまう。ところでハッとする。


「な、なんで、ここに!?」


俺の態度が予想外だったみたいで、雄也くんは眉を顰めて軽く首を傾げた。


「なんでって、メールしただろ?」

「そうじゃなくて!その……」


なんで、クリスマスに俺のところに?
雄也くんは一瞬視線を外した後、また強い眼差しで俺を見た。


「どうせお前、あいつと連絡取れないままなんだろうが」

「陸とは…うん」

「せっかくクリスマスなんだから、1人より俺と過ごせよ」


雄也くんは俺の隣に並ぶなりいきなり肩を抱いてきた。
俺は不意を突かれてしまい、雄也くんの方に体重を預けてしまう。触れ合う服と目の前にある首筋に心臓がまた激しく動き出した。


「だ、だって、彼女は?」

「は…?」


声が震えそうになりながらやっとの思いでそう言ったら、雄也くんはなんとも間の抜けた声を出した。


「居ねえって言ったろ。たしかメールだけの時に」

「あれ2、3ヵ月くらい前の話だから、もうできたのかなって。ほら、クリスマスだし!」


クリスマスだからってなにも嬉しいことは無い。
クリスマスだからお祝いしたいとか。そんな感情はもう2年前に消え失せた。でも雄也くんは知らない。言ってないし、知らないでほしい。
引き攣った頬を上げて曖昧に笑った。


「雄也くん、かっこいいから…すぐできると、思って」


陸のことで相談に乗ってくれるのはありがたいけど、こんな時まで俺のところに来てくれて…。いい人だな…。顔良し頭良し中身良し。女の子でも男の子でも、雄也くんならイチコロだ。こんな漫画から飛び出したようなデキた人なかなかいない。





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