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嫉妬すると自分の行動が本能のままになってしまう。
その所為で次郎を傷付けてしまう。

「雄也…?」

次郎の細腕に残る鬱血痕。本人は気にしていないように振舞っているが、シーツしか纏っていない純白の肌には痛々しく映える。今にも折れてしまいそうなこの腕を昨夜、ベルトで縛って傷付けた…。急に自分が怖くなった雄也は、再度次郎を抱き締める。自分が着るシャツを握り締め、次郎がはにかんだ笑みを見せた。

「甘やかすってこういうことですか?」

「……」

「……?」

抱擁してスキンシップを楽しむ。それだと解釈したらしい次郎は、見上げた先にあった雄也の顎にそっと唇を触れる。

「俺なら大丈夫だけど?」

今になって罪悪感が芽生えたらしい恋人を、苦笑して逆に慰める。
たまにそういう行為(縛られるなど)をされていた次郎は、怒りをそのままぶつけられることに恐れはしたが、最終的には自分も引き込まれていた。――快楽へと。
そんな自分が彼を咎められるはずはない。

「ごめん」

謝ってもやってしまったことは取り戻せない。雄也はそれが分かっていても、腕の中へと許しを請う。
次郎は一時目を瞬かせるが、すぐに笑顔になった。それを見た雄也は機嫌を損ねたようにそっぽを向いた。

「人がせっかく謝ってやっているってのに…」

「謝ってやっている?」

そのまま続けようとする雄也は、すかさず口を挟まれた。
怒りが篭っていない、茶化すような口ぶりに毒気を抜かれる。

「ま、雄也にはそれくらいが似合うよ」

「わかるのか?」

いつからこれほど距離が縮まったのだろうと、考えずにはいられない。それほど2人の出会いは奇跡的で、薄弱なものだった。それを思えば、今の状況は遥かな進歩だ。

「…俺にしか、分からないよ。雄也にも」

互いのことを全て知り尽くしたわけではない。
次郎の家族、雄也の家族、産まれた場所、見てきた世界。
とりわけ知らなくても関係は続けていられるし、次郎も雄也も話そうとはしていない。2人の間に、恋情以外の何も要らない。それだけで手一杯だ。







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