もう少し


最近なんだか青山と行動することが多くなったような気がする。今さっきだって「帰りにコンビニ寄らない?」という誘いにのったばかりだ。なぜかと言われれば理由は明らかだが別にあいつと行動しなくてもいいはずなのになぜか誘われれば頷くしあちらも誘えば頷く。まあ、嫌ではないので問題ないのだが。寧ろ好ましいように思う。

「霧野!」

ロッカーを閉めると同時に後ろから声をかけられた。振り向けば自分よりいくらか小柄な青山が黒の跳ねた髪を揺らしながら俺を見上げた。

「帰ろうぜ」

ああ、と頷いて他の部員にあいさつを済ませると青山が袖の裾を引っ張って「早く行こう」。なんてドキッとすることをするもんだから少し焦った。女子にされわけでもないのにドキッとするなんて変だ。こいつは小柄だし線も細い、おまけに声だってまだまだ高い。女子に見えなくはないが同じ男子である。親友にでも感化されたんだろうか。

「ところでなんでコンビニ?」
「新作のお菓子がでるんだ」
「女子かよお前」

笑えば青山は「笑うなよ」。と顔を朱にして訴えてきた。ちょっとだけ可愛いなぁ、なんて思いながらも学校からすぐのコンビニに入る。部活帰りの学生がちらほらいた。青山はちょこちょことお菓子の棚の方へ移動してすぐに目当ての物をレジへと持って行った。
ありがとうございましたー、という店員の声を聞きながら店から出るや否や青山は先ほど買ったお菓子を袋からだし開封した。ふんわりとこの時期らしい苺の香りが鼻先をかすめる。どうやら苺のお菓子らしい。

「おいしい?」

棒状のお菓子を咥えた青山に問いかけるとペキンとお菓子を折って咀嚼した後それはそれは嬉しそうに頷いた。ちょっとどころじゃなく青山が可愛く見えた。というか多分可愛い。

「変かもしれない」
「なにが?」
「なんでもない」
「ふーん…霧野も食べる?」

そう言って渡されたお菓子を口に入れると甘ったるいチョコと少量の酸味。

「甘い」
「結構甘いな、これ」
「お前、甘いの好きなのか?」
「好きだよ」

ふーん、と相槌をつくと青山は首を傾げたがすぐに残りを食べ始めた。

「隣町って行ったことある?」
「ないなぁ」
「駅前に美味しいクレープ屋があるらしいんだけど」

今度行かないか?、と言う前に青山が「次の休みに行こう!」。と楽しそうに言った。

「次の休みな、分った」
「約束だぞ」
「分ってる」

嬉しそうにお菓子を再び頬張り始めた青山をみてじんわりと胸の内が温かくなった。親友には失礼だが男が男と付き合うなんて変だ、と思うところが少しはあった。でも今はなくなったような気がする。俺は青山のこと好きなのかもしれない。


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テーマ「人外ファンタジー」
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