指切り
幼い頃、約束したら指切りするというものが普通だった気がする。それが今では口で約束して終わりだ。別に指切りしたいわけではないがなにか寂しいものを感じる。
「半田」
そんなことを考えていたら声をかけられた。声のした方向をみれば風丸が綺麗な蒼い髪を揺らしながら駆け寄ってきた。
「すまない、遅くなって」
「大丈夫だから行こうぜ」
そういうと風丸は小さく「あぁ」とだけ言った。それにぎこちない雰囲気が漂ったが気にしない。まだ俺たちは付き合ったばかりなのだから。
そのまま別れ道の近くまできたところで風丸がいきなり「そういえば」と声をあげた。
「さっき半田は何を考えていたんだ?」
「さっき?」
「俺を待ってたとき」
ああ、あのときか。と思い出すのと同時に恥ずかしさがこみ上げてきた。
「どうした?」
「えっと、あの...」
ああ!そんな不思議そうな目で俺をみるな!言うから言うから!と心の中で奮闘する俺。ものすごく痛い。
「えーっとさ、指切りのこと」
ごにょごにょと最後は小さくなる俺の声。
「ああ、指切りね」
ふーん、と風丸は言ってそこで会話はまた途切れた。それから別れ道についたところでまた風丸が話しかけてきた。
「なあ半田、明日暇か?」
明日は部活も休みだしこれといった用事も入れてないので「暇だけど」と答えると「どっか行こうぜ」と言われた。
「えっ」
「なんだ、嫌なのか?」
別に嫌ではないがこれはあれだ。所謂初デートの約束と言うやつだ。かあっと顔に熱が集まりそれを隠すように自然と顔が下を向く。
「..嫌じゃないけど」
「じゃあ約束な」
そう言って風丸は小指を出してきた。不思議に思って顔を上げると「ほら」と綺麗な笑顔で催促された。おずおずと風丸の小指に小指を絡めると顔の熱は途端にそこに集まる。風丸が定番の歌を歌っているような気がするが残念ながら俺の耳には入ってこなかった。
「指切った!」
そこで小指と小指が離され聴覚も正常に働きだした。「詳しくはまた後でメールするな」と風丸は言って、ひらりと手を振りながら帰っていった。俺はそんな風丸と小指を交互に見つめながらその場に立ち尽くした。
......
なんかぐだぐだすみません。