きみの温かさを知る


寒いのは冬のせいの続き

暗い道をのろのろと歩き家に着けば母さんに「ご飯の準備しておくからお風呂入っちゃいなさい」と言われた。時計をみればもう7時を過ぎていてびっくりした。学校をでたのは6時だからあれから1時間も経っている。ぼーっと時計をみていたらまた母さんに「真一早くお風呂入ってー」と言われたので急いで着替えをもちお風呂へ向かった。

ぽちゃり、そんな音をたてて天井からの水滴が浴槽に飛び込む。湯気を放つ暖かなお風呂でさえも俺の胸のうちに広がる冷気を消せはしなかった。ぽちゃり、今度は俺の頬をつたい水滴が浴槽に次々と飛び込んだ。

それから気持ちが落ち着きお風呂をあがったのは30分位後でお母さんに文句を言われた。今は夕食を終えベッドに寝っ転がっている。日中の練習のせいかもう眠くなってきた。まだ起きていたいのだが瞼は静かにおりていく。

深夜、俺は寒さに目を覚ました。タイマーにしてあった暖房も消え掛け布団も足元に追いやられていた。携帯を開けば只今の時刻は0時26分で新着メールが一件。メールを開くと差出人は風丸、送られてきた時刻はちょうど2分前。内容をみると「会いたい」とだけが書かれていた。返事を送ろうか迷っているともう一件。次は「窓開けてみて」と書かれていた。その指示通りに窓を開けるとさーっと冷気が顔にあたり部屋に侵入する。ふと家の塀付近に人影が見えた。よく見なくても分かる、あれは風丸だ。そう気づけばあとは速い。家族にバレぬよう足早に階段を下り静かに玄関のドアを開ける。微かな音に気づいたのか風丸がひょっこりと顔を覗かせた。俺は静かにドア閉め風丸に抱きついた。

「ごめん風丸、あんなこと言って」

風丸が俺をぎゅっと抱きしめる。

「本当は好きで好きで別れたくないのに..なのにっ」

「俺も悪かったんだ、半田を不安にさせて」

「っ風丸」

思わず涙が溢れて止まらない。

「半田、好きだ」

「っ俺も好きだ風丸」

ぎゅっと再び強く抱きしめられる。さっきまで胸のうちに広がっていた冷気はなくなり暖かい何かが代わりに広がった。






第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -